神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『乱歩傑作選集』(平凡社)の内容見本

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新年度や新元号「令和」とはまったく関係のない『乱歩傑作選集』全12巻(平凡社)の内容見本の話。一昨年大阪古書会館たにまち月いち古書即売会で購入。唯書房出品1500円。四つ折りの紙に1500円出すのはややためらいがあったが、黄金仮面のインパクトに負けた。この選集は昭和10年に発行され、第1回配本第1巻が『黄金仮面』であった。推薦文として、川崎克「渠の魔力」、大下宇陀児「珍らしい程の面白さ」、丸山鶴吉「乱歩傑作選集を推奨すーー刑事犯罪学の立場からーー」が載っている。丸山の肩書きは、前警視総監である。丸山が面白いことを言っているので紹介しておこう。

(略)
江戸川君は現代日本が有つ最大の探偵小説作家である。その構想の緻密なる、その文章の味はひ深き、その本格的な探偵文学の大きな力は、あらゆる読者の怪奇的、猟奇的興味を満足させると同時に処世上の智慧と炯眼を眼ざまし行く。近代的犯罪の事実的頻発は我等賛成出来ないが、現代生活の意慾の流れはそこに存在する以上、それの満足を文学に求むるは当代の傾向と言はねばならず、刑事犯罪学の立場から言つても本選集の普及は寧ろ現代的猟奇的意慾を学術的に転化するよき安全弁ともなるであらう。(略)

丸山前警視総監が今も生きていたら、ロリコン漫画は抑止効果のある安全弁だと言ってくれるだろうか。