神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

講談社の三木章と画家田中比左良

先月の寸葉会では講談社婦人倶楽部の三木章宛田中比左良(世田谷区松原町)の葉書を。田中は漫画家・挿絵画家とぐらいしか知らない。かわじもとたか『続装丁家で探す本追補・訂正版』(杉並けやき出版、平成30年6月)によれば、江戸川乱歩『恐怖王』(文藝圖書出版社、昭和27年8月)など98冊の装丁本があるようだ。現代ユウモア全集13巻『田中比左良集』(現代ユウモア全集刊行会、昭和4年)はよく見かけるが持っていない。『田中比左良展:昭和モダンとユーモア』(岐阜県美術館、平成2年)をみると、昭和3年から『主婦之友』に連載した「モガ子とモボ郎」がよく知られているようだ。葉書は、昭和31年5月15日の消印で、印刷の文面は、
・昨晩遠路来会いただいたことへの御礼
・皆のこうした好意は自分の新工房に新しい勇気と希望燃焼の大きな料となること
などが書かれている。前掲図録の年譜には、昭和34年4月世田谷区松原町の自宅に田中比佐良デザインアトリエを設置とあるが、31年段階の「新工房」についての記載はない。
一方の三木は、昭和12年講談社入社。三木と田中の関係はよくわからないが、図録の年譜によると、田中は戦前から講談社の『講談倶楽部』に描いているので、戦前からの知り合いだったかもしれない。今回三木宛葉書を一枚見つけたが、おそらく三木の旧蔵書や他の書簡も古書市場に出ているのだろう。後に『小説現代』の初代編集長や講談社専務となり、『わがこころの作家:ある編集者の青春』(三一書房、平成元年9月)という著作もある三木なので著名作家からの書簡とかを掘り出したいものである*1
追記:令和元年11月1日・2日東京愛書会の目録に山田風太郎の三木章宛葉書15枚一括19万円(古書馬燈書房出品)が出ていた。

続装丁家で探す本 追補・訂正版

続装丁家で探す本 追補・訂正版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 杉並けやき出版
  • 発売日: 2018/07/01
  • メディア: 単行本
わがこころの作家

わがこころの作家

*1:「日本の古本屋」に講談社小説現代三木章宛阿川弘之自筆書簡が出品されている。