『新人壇』2号(新人壇同人、昭和35年2月)と3号(同年8月)、これも知恩寺の古本まつりで竹岡書店の均一台から。創刊号は見当たらなかった。初日はさえなかった竹岡の均一台だが、日を追うごとに充実していった。同誌は実相寺昭雄や阿部昭らの同人雑誌である。善行さんが同誌の後継誌『逆』4号(36年1月)を拾っている*1。『逆』は『新人壇』を改題したもので、号数は両誌で通し番号になっていて、かつ、『逆』の5号は出なかったので、1冊だけで終わっている。
『新人壇』2号(編集者実相寺)の目次は、
天幕の下にて 阿部昭
アイスクリーム 実相寺昭雄
幻 石井清一
ミノトール試論 松浦豊敏
罪 篁剛人
敗北 高紳尚
壁画 伊葉淳介
後に6回も芥川賞候補となる阿部を『新人壇』に誘ったのは、ラジオ東京に同期入社した実相寺である。今野勉『テレビの青春』(NTT出版、平成21年3月)によると、
(略)一九六〇年の一月頃、実相寺昭雄は、テレビ教養部にいた阿部昭と新宿の太宗寺近くのスナックでひそかに会った。
ひそかに、というのは、用件が文学の話、具体的には同人誌への誘い、だったからだ。
実相寺は、創設したばかりの同人誌『新人壇』のメンバーのひとりだった。
(略)阿部に接触しようとし、仲介を、中村寿雄に頼んだ。
(略)
阿部は、実相寺の誘いに、いいよ、と言って、新宿のスナックに、短編小説『天幕の下にて』を持ってきた。
(略)その小説を一読して、実相寺は、おれはもう小説を書くのはやめる、と決めた。
おれには文学は無理だ、エロ小説でも書こう。
実相寺がその後エロ小説を書いたかどうか知らないが、ウルトラマンの演出など演出家や映画監督などとして名前が残った。
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