神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

ようやく解けた謎の宮本三郎『サンカ画集』

私には長らく抱えている未解決の謎が幾つかある。そのうちの一つが宮本三郎のサンカ画集である。これは、サンカ研究会編『いま、三角寛サンカ小説を読む』(現代書館、平成14年8月)の佐伯修「三角寛サンカ小説を読者はこう読むーー読者アンケートよりーー」に出てくるものである。この中で『三角寛サンカ選集』全7巻の読者アンケートが紹介されていて、広島県の81歳の男性が「宮本三郎画伯の挿画にハマリ、サンカ画集も買ったことがありました」と回答していた。宮本三郎のサンカ画集なんてあるのかと驚いたのだが、色々調べても実在が確認できなかった。
ところが、先日京都古書会館で開催された「京都まちなか古本市」で見つけた『名作挿画全集』2巻(平凡社昭和10年8月)の目次を見ると、宮本三郎画として三角寛丹沢山悲炎記」と菊池寛「三家庭」があがっていた。宮本のサンカ画集とされるものはこれだろうと思い、早速購入。あがたの森書房出品で500円。気になるのは、想定していたのは一冊全部がサンカ小説の挿絵である画集だったが、本書は190頁ほどの本のうち宮本画は36頁、更にサンカ小説である「丹沢山悲炎記」に係る分は15頁に過ぎない。他は、富永謙太郎、中村岳陵、斎藤五百枝、太田三郎細木原青起、河野通勢の画である。一応老人の記憶違いで本書を「サンカ画集」と表現したとみておくが、国会図書館人文総合情報室の優秀な諸君なら「オタさん、その本ではなくて、こんな本がありますよ」と真相を教えてくれるかもしれない。
なお、本書には附録として『さしゑ』2号が付いていて、宮本の「山窩をたづねて」が掲載されている。これによると、昭和9年三角の山窩物の挿画を頼まれた宮本は、山窩の生活を全然知らないので、三角に頼み石神井川畔に住む大利根の元吉というサンカの様子をスケッチに行っている。

いま、三角寛サンカ小説を読む

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