神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

押川春浪率いる天狗倶楽部が立てた天狗塚を訪ねる日夏耿之介

日夏耿之介『鏡花・藤村・龍之介そのほか』(光文社、昭和21年11月)の「炉辺子の墓に詣るの記」に天狗倶楽部の天狗塚が出てくる。日夏は、平井功の13回忌(昭和19年)に雑司ヶ谷墓地へ平井の墓を訪ねた折、泉鏡花ラフカディオ・ハーン島村抱月夏目漱石の墓と共に押川春浪の墓も訪ねている。

こゝにて又平井氏一行と会したれば、氏の案内にて押川春浪が墳墓にいたる。天狗塚といふは天狗倶楽部の立てたるによるものにや。されど目のあたりには、さる妖異の気漂へる墓域にあらず。さりとて夫の勇ましき武侠草紙の面影もこれなし。まつたく世のつねのお墓のみ[。]す。[ママ]なはち
押川春浪
天狗塚を訪るるものつねの荻風のみ
と吐きすてて、こゝに墓地の散歩終へたれば、まつすぐに衝き抜けて電車みちに出づ。(略)

押川が亡くなった大正3年から30年たち墓や天狗塚に詣る人はいなかったようだ。しかし、押川や天狗倶楽部に関する著作を出されている横田順彌氏が近年訪れていて、氏の『快絶壮遊[天狗倶楽部]ーー明治バンカラ交遊録ーー』(教育出版、平成11年6月)に天狗塚の写真が載っている。そこには、「雑司ヶ谷墓地の押川家の墓に向かい合っている天狗碑。台座も入れると人間の身長も越しそうな丈の高い碑である」と書いている。私も一度訪ねて見たいものである。

快絶壮遊 天狗倶楽部―明治バンカラ交遊録 (江戸東京ライブラリー)

快絶壮遊 天狗倶楽部―明治バンカラ交遊録 (江戸東京ライブラリー)