下鴨納涼古本まつりで竹岡書店の3冊500円コーナーから東晋太郎『夕靄』(歌集夕靄刊行会、昭和36年1月)を購入。219頁、私家版、上原専禄宛署名入り。歌集や句集には興味がないが、序文や年譜等をざっと見て面白いことが書いてあれば、買うことにしている。今回は、年譜の昭和18年の条に「(四月)山本五郎氏の後をうけ(関西学院大学)図書館長となる」、20年の条に「七月図書館蔵書中重なるもの約一万冊、非常なる労苦を以て有馬街道名塩小学校に疎開す」とあるのにひかれて購入。
蔵書の疎開については、ネットで読める『関西学院大学図書館史 1889年〜2012年』(関西学院大学図書館、平成26年1月)によれば、
第2次世界大戦の終焉が近づくにつれて空襲が激化し、図書館としては、これに対応するために、1945(昭和20)年5月から7月にかけて、重要図書9,000冊を、名塩国民学校、川西町花屋敷奥小路民蔵邸、武庫村友行国光宣揚会道場に分散疎開させたりしている。
とあった。都立日比谷図書館の蔵書疎開については、金高謙二氏によって映画『疎開した40万冊の図書』や著書『疎開した四〇万冊の図書』(幻戯書房、平成25年8月)になるなど、よく知られている。一方、関西学院大学図書館の蔵書疎開についてはほとんど知られていないだろう。疎開した蔵書数も多くないし、日比谷図書館みたいに疎開しなかった蔵書が空襲で全焼というドラマ性もない。しかし、関西学院大学図書館の蔵書疎開について、誰がどのように運んだのかなど詳しく知りたいものである。
本書の昭和21年の部には、東が学院図書館前で詠んだ
見のかぎりみどりの芝生夏の雨ゆたけくふりてこゝろ足らへり
が収録されている。空襲から図書館や蔵書を守りきった館長としての思いが出た一首だろうか。東は病気で辞任する昭和30年12月まで館長を務めた。
- 作者: 金?謙二
- 出版社/メーカー: 幻戯書房
- 発売日: 2013/08/10
- メディア: 単行本
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