神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

トーアホテル(TOR HOTEL)のリーフレットに残された書き込みの謎

お馴染みの古書店で神戸にあったトーアホテル*1リーフレットをゲット。トアロードの由来とされるホテルとぐらいしか知らないが、一時期日本ホテル史に関心があったのと、紙物は二度と出会えない可能性が高いので確保、864円。三つ折りで折り畳んだ状態で縦17.5cm横10cm。表紙には、商標である鳥居のマーク、ホテルの全景図、「神戸/トーアホテル」、「TOR HOTEL」や「MANAGER A.MILDNER」とある。裏表紙には「位置」として、

神戸市の中心山の手でありまして
神戸驛、三宮驛並に突堤まで自動車で各々五分の所であります。
日本趣味豊に廣大な庭園には四季様々の花が咲きお目醒にはチヽとなく小鳥
のさへずる聲も聞けやうと云ふ靜けさは當ホテルの特長で御座います。
また港の出船入船も夜のパノラマ神戸の町も一目に見ゆる眺望絶佳の場所で
御座います。

とある。また、「神戸 岡部商店印刷事務所印行」とあるが、発行年は不明である。
宿泊と食事の料金は和英併記されていて、例えば食事料は
朝餐 二・〇〇 七時ヨリ九時
夕餐A二・七五 B三・五〇 七時ヨリ九時
宿泊料は
米式(食事付)
御一人 専用風呂付 十四圓ヨリ
御二人 〃 二十六圓ヨリ
とある。料金から発行年がわからないかと調べてみると、田井玲子『外国人居留地と神戸ーー神戸開港150年によせてーー』(神戸新聞総合出版センター、平成25年11月)に昭和10〜11年頃とされるリーフレット(神戸市立博物館所蔵)が紹介されていて、それには、
食事付シングル12〜18円、ツイン22〜30円とあった。私が入手したリーフレットの方が宿泊料の最低料金が高いから、より新しい時代の物と見てよいだろうか。もっとも、宿泊料を引き下げることがあったとすると話は別である。いずれにしても昭和18年には閉鎖されたので、それまでの発行である。博物館所蔵の分はどのように年代を推定したのだろうか。
ところで、実は入手したリーフレットの朝餐の料金二・〇〇は手書きで「一・〇〇」に訂正されているが、英文の方は¥2.00のままである。外国人と日本人で朝食の料金だけ差を設けるというのは考えにくく、謎の書き込みである。誰か説明できるかしら。

外国人居留地と神戸―神戸開港150年によせて

外国人居留地と神戸―神戸開港150年によせて

*1:トアホテル、東亜ホテルとも表記される。