神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

小島威彦をしきりに気にする『風車』同人の相良次郎

永松定『二十歳の日記』(河出書房新社昭和35年6月)に小島威彦が出てくる。

(昭和五年)七月五日
(略)
ヴァーニジア・ウルフの本が、三省堂に来ていることをきく。相良、早まった結婚生活に少しあきたらぬようすで、「風車」をやっている連中のことや、小島(注 威彦。哲学研究者。近ごろ、フランスの哲学者マルセルを日本に連れて来たりした)のことや、阿部(注 知二。作家)のことを、しきりに気にする。

「相良」は、相良次郎で昭和2年5月創刊の同人雑誌『風車』同人、英文学者。ウィキペディアによると、出版史研究者相良広明の兄。スメラ学塾の小島とは熊本の第五高等学校文科甲類大正13年卒業の同級生*1。小島は昭和3年京都帝国大学文学部哲学専攻を卒業後、東京帝国大学の大学院に進学していたようだ*2
ちなみに、五高同期で『風車』同人の上林暁(本名・徳廣巌城)も日記に出てくる。

(昭和五年)
九月十九日
(略)
昨夜、校正が出たので、改造社に電話をかける。徳広(注 上林暁改造社とあるのは、当時の上林の勤め先)来る。村岡もあとで来る。三人で、可愛い娘のいる喫茶店に行く。
ワンタッチ五十銭のエロ・カフェの話などきく。
徳広がカフェ廻りなどしている話をきくと、ちょっと不思議なような気がする。

「村岡」は、『風車』同人の村岡達二。なお、「あとがき」には、「一応は、主人公がつけた古い「日記」を契機として、それを土台にしたものであることは事実であるが、「日記」そのままではなく、これはどこまでもひとつの小説、虚構(フィクション)として読んで頂きたい」とあるので、必ずしも事実そのままと受け取ってはいけないかもしれない。

*1:『風車』同人で第五高等学校文科甲類三ノ組の同級生は他に町野静雄、秋澤三郎がいる。永松も同級生だが大正14年卒業。

*2:ただし、『東京帝国大学一覧昭和五年度』(東京帝国大学昭和5年7月)には記載なし。