神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和戦前期の京阪神における文献研究家

『南木芳太郎日記ーー大阪郷土研究の先覚者ーー』1巻(大阪市史料調査会、平成21年12月)で昭和5年6月27日の条に貼り付けられた『夕刊大阪新聞』同月24日の記事が翻刻されている。内容は、南木が相談役となり大正15年4月発足した浪速叢書刊行会から発行された浪速叢書全16巻の完成との関係で京阪神における文献の研究家を掲げたものである。要約すると、

演劇歌謡 南木芳太郎
狂歌 黒崎貞衛(ママ)
遊廓 三宅吉之助
江戸大阪五十三次の道中記 大藤常次郎
浄瑠璃 古靭太夫(本名金杉弥太郎)
日本に於ける銅版画 西村貞
ダンテ 大賀寿吉
料理 恒松抄
謡 高安六郎
明治文学 青山督太郎
魚釣 肥田修
徳川時代の電気事業 浪岡具雄
大阪に於ける歌舞伎絵及び錦絵、版画、支那版画 岡田伊三次郎
古版地誌 高木利夫(ママ)
西鶴時代の挿絵 青木兵七
日本に於ける切支丹 飯島幡司
洒落本 忍頂寺努(ママ)
富士山 大仲空蝉
仏教美術田吉郎兵衛
新聞紙 上野精一
御陵 小林利昌
人形芝居 石割松太郎
大阪地誌 田中捨二
外国の人形芝居 南江二郎
煙草と酒 長田作之進
馬 有馬頼吉
地震及鯰 小西石蔵

日本古書通信社編輯部編『日本蒐書家名簿昭和十三年版』(日本古書通信社昭和13年6月)の京都・大阪・兵庫の部を見ると、両者に挙がっている人物は、南木、高安、青山*1、肥田、上野だけである。もっとも、大賀、高木や石割のように昭和13年までに亡くなっている者がいる。『日本蒐書家名簿』にしろ、金沢文圃閣から復刻された『特選蒐集家名簿』(古典社、昭和10年3月)にしろ地域別になっているので、蒐書家について五十音順で引ける事典が待たれるところである。未見だが『二級河川』13号(金腐川宴游会、平成27年4月)にトム・リバーフィールド「蒐集家名簿(仮)・石川県編」が載っているようで、これの全国版が五十音順の索引付きで出れば良いわけである。
なお、大賀については、「ダンテ研究者大賀寿吉の蔵書」などで紹介したことがある。

*1:『日本蒐書家名簿』には青山容三として挙がっている。反町茂雄編『紙魚の昔がたり 明治大正篇』(八木書店、平成2年1月)によると、「大正・昭和時代の大阪の印刷業者。明治文学を好み、斎藤昌三と協力して、私費を投じて雑誌「愛書趣味」を刊行配布し、明治文学研究熱の昂揚に貢献した」という。