神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

昭和三年全国古本屋・見立番付

読売新聞昭和3年7月14日朝刊に「昭和三年全国古本屋・見立番付ーー公募入選佳作(但本社図書室校訂)ーー」が載っている。東方は、

横綱 東京 文求堂
大関 東京 浅倉屋
張出大関 東京 村口
小結 東京 琳琅閣
前頭 東京 南陽堂、東京 一誠堂、東京 巌松堂、東京 北沢、東京 松村、東京 源泉堂、東京 明治堂、東京 玉英堂ほか

など17の古本屋。
西方は、

横綱 大阪 鹿田
大関 京都 細川
張出大関 大阪 荒木
関脇 京都 竹苞楼
小結 名古屋 松本
前頭 大阪 梁江堂、名古屋 其中堂、京都 進文堂、京都 丸三、京都 杉田、長崎 共益館、大阪 高尾、京都 其中堂、大阪 天牛、京都 国井ほか

など17の古本屋。年寄は東京 丸善、京都 聖華房ほか。行司は帝国図書館東洋文庫大橋図書館。この番付を応募した人は相当の古本者だと思うが、読売新聞でこの番付に対して「新番付評」を書いた「行司覆面子」もかなりの古本者だったと思われる。
「荒木を張出大関に持つていつたのは妙ぢや。二段目前頭の二枚目に長崎の共益館を据えたのは英断ぢや。西方に顔が見えないので寂しいのは、京都の山田茂ぢや、この先生古本の目利きでは素晴らしいものぢやが、今では微禄しとるからのう。」と書いている。あと気になるのは、

(略)驚いたのは行司だぞ。なぜ読売新聞の図書室が自ら進んで行司にならんのぢや。おれみたいな温良な図書館の先生に、この難役大役をおッつけるとはヅルイぞ。

とも書いていて、「覆面子」は図書館関係者のようにも読める。今なら「あなた、書物蔵さんでしょう」と言いたくなるような博識、文体のこの人物は果たして誰なのか。
なお、この見立番付については、『ブック・レビュー』2巻8・9合併号(図書研究会、昭和3年8月)の「全国古本屋番附・雑観」で紹介されている。それによると、この番付は明治42年*1名古屋の其中堂が自店の営業宣伝用に作成したもの以来ではないかとしている。

*1:『古本屋』5号(荒木伊兵衛書店、昭和3年5月)で復刻されているが、明治41年1月1日付けである。