神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

警視庁の検閲官が三角寛に検閲に関するヒアリング

金箔書房で『覆刻月刊随筆博浪沙』第一分冊(博浪沙覆刻刊行会、昭和56年)を200円で。第二分冊も同額で購入。「日本の古本屋」で調べると、本来は函付で第四分冊まであるようだ。第一分冊は『随筆博浪沙』(博浪社)の昭和13年8月号から14年6月号までの合冊版。『博浪沙』(はくろうさ)は『日本近代文学大事典』によると、佐々木味津三追悼会(昭和9年2月没)が機縁で、田中貢太郎を囲む会が結成され、それを母胎として出した私的グループ雑誌。昭和9年8月〜10年4月(第1次、編集発行人清水泉)、13年8月〜18年10月(第2次、編集発行人田岡典夫)があり、第1次と第2次の間の11年10月〜12年5月に『博浪沙通信』全7号を発行。
昭和14年4月号に三角寛が「検閲のこと」を書いていた。内容は、突然警視庁の検閲の人から検閲に関する質問を受けてその時に回答した内容を述べたものだ。警視庁の質問は、

一、目下の状勢は思想転換期に直面してゐる、今後どう言ふものを書かれる方針か?
一、目下当局のやつてゐる検閲のやり方について不満や希望はないか。
一、広告検閲についてはどう思ふか?
等その他二三

これに対して三角は、
・私は国民精神総動員などと叫び出される前から、外国文学などの雑炊でない純然たる日本の文学ということを考えているので、今更新しい方向などない。
・当局がちょん曲げ長脇差の不良小説をなくしたことは結構と思う。
・恋愛現代小説こそ甚だ困ったもので、世を益する小説でない限り、部分的な注意などでなく、役にも立たないものなら、一作全部の削除を命じてほしい。
・作品は人であるから、編輯者を叱るのみでなく、執筆者のブラックリストを作って統制したらよかろう。
・広告の検閲など当局の今の姿勢は余りにもゆるすぎる。
・婦人雑誌をもっと厳密に検討してもらうこと、もう一つは漫画である。