神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

南多摩農村図書館旧蔵の植村長三郎『書誌学辞典』

天地書房で購入した植村長三郎『書誌学辞典』(教育図書、昭和17年8月)。背表紙に「南多摩農村図書館保管/海老原蔵書/第6門/1501号」のラベル。扉にも同様の記載のラベルがあるが、「第7門」になっている。独自の図書分類だろうか。
浪江虔図書館運動五十年ーー私立図書館に拠ってーー』(日本図書館協会、1981年8月)によると、南多摩農村図書館は、

昭和14年9月21日 私立南多摩農村図書館仮開館
15年1月 東京府知事から開設許可の通知があり、「正式開館」
同年5月13日 浪江が警視庁特高部に検挙され、12月末に起訴される。
16年1月 休館
17年5月 判決(懲役2年6カ月、未決拘留300日通算)があり、服役
同年7月 豊多摩刑務所に移され、満期までつとめる。
19年2月1日 満期釈放で3年9カ月ぶりに家族の元へ戻る。
同年11月 図書館を再開したところ、利用盛大
20年1月から4月半ばまでに、4人の友人宅から、約3千冊の本を運んで図書館に預り、蔵書とともに利用に供する。

4人の友人について、同書89頁には、

「蔵書を預ける」という話は、武蔵高校時代の友人、海老原晃君からで、訪ねてみると部屋中が本、しかも選び抜かれた本であった。正月早々から運び始めたが、そのうち同じ武蔵仲間の伊沢紀(飯沢匡)君、伊沢元美君、寺崎鉄男君の奥さん(鉄男君は応召中)からも同様の申し出があり、嬉しい悲鳴をあげる始末であった。

「海老原蔵書」は、この海老原晃の蔵書であろう。海老原を検索すると、同名の人が『新制ドイツ語中級読本』(郁文堂書店、昭和24年)を刊行しているが、同一人物だろうか。