神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『大阪ふるほんやMAP』を作った青空書房のさかもとけんいちさん

先日のORC200の古本市で入手した『大阪ふるほんやMAP』(大阪府古書籍商業協同組合、昭和43年4月)。折り畳み式で表面が古書店地図、裏面が「浪速紙魚双六 古本屋名所巡り」である。編集「あきれすけん」、アイデア伊藤光三」、構成「杉本要太郎」とある。伊藤はカズオ書店、杉本は杉本梁江堂である。では、「あきれすけん」とは誰であろうか。
この地図は、今月2日に亡くなったさかもとけんいちさんの著書『浪華の古本屋ぎっこんばったん』(SIC、2010年7月)にサイズを縮小して、特別付録として付いている。その「復刻にあたって」には、「本品は著者ならびに大阪府古書籍商業協同組合のご厚意により、昭和43年発行の地図をそのまま復刻したものです」とある。また、本文51頁には、亡くなった心友として、「古本同業者では、一緒に大阪古書月報を編集し古本屋マップを制作した伊藤光三さん。商い下手な私を、蔭となり日向になり助け続けてくれた古川橋の上山正直さん」とあり、「あきれすけん」とはさかもとさんのことと思われる。地図自体もさかもとさんの作成ではないかと思われるが、どこにも記載はない。さかもとさんはこのような作品も残してたんだ。
私は商店街の店を閉めた後に自宅で再開した店に何度か行ったことがある。その時もらった『大阪古書月報』312号(大阪府古書籍商業協同組合、平成28年1月)にさかもとさんが書かれた「KAMISANからのプレゼント」には、

命を懸けている書房(ルビ:ほんや)に一週間 ひとりの客もなく路地の中の四畳半ほどの古本屋は すつかり末枯ふれて正い(ママ)閑古鳥が鳴く始末 ポスター作戦もキャッチフレーズも石の礫に。(略)電気代、保険、それに仕入の本代にも詰まり 逆さに振っても財布は空 参ったなあ いよいよ けん一ジ・エンドかなと思っている。

とあり、再開後は苦労されたようだ。でも、遠方から来てくれる客もあるのが嬉しいとおっしゃていて、台湾の雑誌で紹介されたと楽しそうに見せてくれたこともあった。同じく古書月報の「きた天満の小ぼんちゃん」の末尾には、

大阪に生れ育ち 焼き場も墓場、ついそこ 北区浪花町の陋路 おおきに、おおきに、おもろいあったかい 人生でした。
けんいち

とあり、今となっては遺書のようである。御冥福をお祈りします。

浪華の古本屋 ぎっこんばったん

浪華の古本屋 ぎっこんばったん