神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

口笛文庫で横尾忠則人生初の装幀本『近畿文学作品集』を確保

六甲に「古本とジャズ」の店、口笛文庫がある。このキャッチフレーズだと今風のおされな店だと思い、わすとか誰ぞは「わざわざいかんでもいいか」と敬遠してしまいそうだ。ところがどっこい、近所の奥さんが子供の本を買いに来る町の古本屋である一方、明治から昭和戦前期の黒っぽい本もどかんと積んである。慎重に探さないと古本雪崩を引き起こすので、注意する必要があるが、これまでに大分珍しい本をゲットしてきた。で、今回は戦後の本ではあるが、『近畿文学作品集』*1(近畿文学会出版部*2昭和32年8月)を発見、1500円。近畿文学会の同人の作品を本にしたもので新書判、167頁、頒価200円。発行所は神戸市長田区天神町に所在。装釘・カットは横尾忠則。わしは、装丁が横尾というだけでは買わないのだが、この本は『横尾忠則全装幀集』(パイインターナショナル、2013年6月)によると、

神戸時代の頃にデザインした本で これが生まれて初めて手掛けた装幀。19歳で神戸新聞に入って間もない頃の仕事だったと思う。装幀は当時憧れていた田中一光スタイルのイラストレーションを描いた。まるで切り絵によって描いたような造形作品にしてみた。

横尾の最初の装幀本なのだ。しかも、意外と残っていないようで所蔵する図書館は見当たらず、「日本の古本屋」でもヒットしない。均一台でもスルーしてしまいそうな本だが、関心のある人はタイトルを覚えておきましょう。
目次は、

この作品集の刊行について 杜山悠
作品の紹介と案内 編集部
創作 幻影 谷村礼三郎
創作 霧と潮流 中戸英二
創作 丑松 平井美治
創作 つかのまの夏 川島笙子
シナリオ文学 天鳶絨を着た娘 津久江憲
1カピタン上陸〜16天鳶絨を買つた娘
随筆 生かされているわれら 竹田洋太郎
大衆小説 刀疵を計る男 杜山悠
あとがき

目次にはないが、136頁に横尾の一文と略歴が記載されていて、「コマーシヤルデザインの勉強をはじめてまだ日の浅い私に文学本の装釘というこの仕事は重荷である」と。横尾がまだ21歳の初装幀本であった。

横尾忠則 全装幀集

横尾忠則 全装幀集

*1:奥付には『近畿文学作品集No.1』とある。

*2:横尾忠則全装幀集』に出版社名が神戸新聞社とあるのは誤り。