神保町系オタオタ日記

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吹田草牧『渡欧日記』に桜沢如一の名が

画家吹田草牧が大正11年から12年にかけて渡欧していた時期の日記が京都国立近代美術館ニュース『視る』の303号、平成4年9月から478号、27年8月まで断続的に連載された。わしは全部読んだわけではないが、同時期に渡欧していた入江波光、黒田重太郎、土田麦僊、里見勝蔵、保田龍門らも登場して、興味深い日記である。大正11年6月22日の条には、次のような記述があった。

(大正十一年)
六月二十二日(木曜)
(略)
発信 保田忠兵衛、日高喜一、黒田松之助、同卯兵衛、高橋眞悟郎、井街輝子、岩佐富治、桜沢如一、山中英一、土田千代子、野村一志、吹田富三郎、黒田重太郎

桜沢如一が出てくる。マクロビオティックの桜沢であれば、松本一朗『食生活の革命児 桜沢如一の思想と生涯』(昭和62年6月、竹井出版)によると、大正6年熊沢商店神戸支店に入り、一年おきに欧米を回り、若いがやり手の貿易商人として注目されるようになっていったという。フランスから放送機、受信機、高速度・微速度撮影機などを持ち帰ったこともあるという。日記の桜沢と同一人物とする決め手はないが、多分そうだろう。連載開始時に編集担当だった加藤類子氏(元・同館主任研究官)が同誌478号の「吹田草牧の『渡欧日記』のことなど」で、「小冊子にして出版できれば、より研究に資することが出来るだろう」と書いておられるが、ぜひとも刊行してほしいものである。

食生活の革命児―桜沢如一の思想と生涯

食生活の革命児―桜沢如一の思想と生涯