神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

発禁を免れたと調子に乗って宣伝したら発禁になってしまった『邪淫戒』

図研出品の『仏教之日本』11巻7号(日本仏教新聞社、昭和14年7月)」で紹介した『仏教之日本』に載っていた『邪淫戒』の広告。「四六版三百八十六頁(上記頁数の内四頁だけ不足せり/お含みの条件附にて御注文乞ふ)」とあって気になっていた本である。たまたま見ていた『出版警察報』100号によると、昭和11年12月20日発行、同月23日削除処分。処分理由は、

本書第二九八頁ト第三〇三頁間ニ挿入セル広告文は刺激的ナルニ因リ之ヲ削除。

で、問題の広告文は、

危く発売禁止を免る!!
本書は二九九頁より三〇二頁迄其筋の御注意により削除し、辛うじて発売を許されました。(下略)

最初の1行には傍点が付されている。せっかく、発禁を免れたのに、調子にのって宣伝に使ったら検閲官の怒りを買って発禁になってしまったというところだろうか。こんな広告文まで安寧秩序紊乱というのは無理があると思うが。
誰ぞみたいに検閲官になったつもりで、検閲官の心理を推測すると・・・
「なんじゃこの広告文は。わしがこっそりと見てあげたゲラには載ってなかったぞ。調子にのってこんなことを書きやがって。ハツキンぢゃ。押収ぢゃ( ̄^ ̄)」
というわけかどうか、『出版警察報』101号によると、発行部数500部に対し、押収部数500部。100%の押収率である。おとろし、おとろし。
追記:この広告文は、別冊太陽『発禁本』(平凡社、1999年7月)62頁に掲載されている。キャプションは、「北川智聖訳『邪淫戒(新訳小乗四分律)』大正15年 四六判布装 甲子社書房 <風俗禁止。削除された頁に挿入した広告文は刺激的だと、昭和12[ママ]年安寧禁止>」。