神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

国立国会図書館職員の追悼文集『おもいで』

昨年南部古書会館で拾う。67頁の小冊子で、1981年9月発行。副題に「×××さん追悼文集」とある。所蔵する図書館は皆無のようだ。亡くなったMさんは、略年譜によると、昭和36年文部省図書館職員養成所卒業後、国会図書館に入館、調査局商工課勤務、10年以上調査員を務めたが、躁鬱病を発症。同局庶務課を経て、閲覧部新聞雑誌課で2年勤務したが、職場で自殺、享年45。追悼文を書いた一人近藤一衛によると、

そもそも「産業経済調査マン」の資質としては、個別産業事情に対する飽くなき興味と追跡の態度、情報源の維持管理能力、及び調査分析力の三拍子が必要とされるが、彼についてはこのすべてがそなわった、言わばバランスのとれた理想的な調査マンの一人であったということができる。しかも、英、仏、伊等の語学力や数学等のすぐれた調査技術を駆使していた彼は、調査マンとしての将来性がまことに大きかったのである。

とあり、極めて優秀な調査マンだったようだ。また、スポーツマンでもあって、国会図書館の野球部に所属。野球部長の西村が、はからずも救急車に同乗し、最期を看取ったという。
追悼文を寄せた職員(柳沼を除く)は、

西村正守、柳沼重剛、藤井正夫、桜井保之助、旗手勲、黒川慧、勝原文夫、山本勝明、近藤一衛、富山和夫、渡辺善次郎、天谷章吾、神戸辰雄、H、中村醇ニ、長谷部繁、坂本博、嶋津裕子、新雑課有志、池本幸雄、瓦田純子、沼田良

この他、関口隆克元専調へのインタヴューあり。関係者のほとんどはもう退職しているだろうか。
このような追悼文集を出すというのが、いかにも図書館らしい。追悼文を読むと故人が良き先輩、同僚、後輩らに恵まれていたことがよくわかる。彼は、独身だったようだが、死に場所には一番愛する職場を選んだということだろうか。