神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

早川書房の親切な社員

『PADOMA』9号、1979年9月の神田由美子「SFと私」に、親切な早川書房の社員が出てくる。

今を去る一年ほど前のこと・・・。ちょうど私がSFファンを自認するはしりで、その頃、ハインラインに夢中になっていた。その日も渋谷の旭屋書店のハヤカワ文庫コーナーで向こう一ヶ月のエサを物色していた。(略)ずっしりと重い紙包の手ごたえを楽しみながら地下道へ出たところで、渋谷駅がどっちの方角かわからなくなってしまい、(略)お上りさんよろしく、前を行く男の子ーー紅顔の美少年というにはトウがたち、りりしき青年というには一歩ぬけた、あの不安定な世代ーーに尋ねた。彼は親切に教えてくれて、またさっさと歩きはじめた。突然くるりとふり向いてこっちへ戻ってきた。
「あの、あなた、さっきハヤカワのSFばかりまとめて買っていたでしょ」
「えっ?」
「ぼく、今年ハヤカワに入ったばかりの社員だけど、あんなに一度にたくさん買う人、初めてです。少し話していただけませんか。」
これ、ホントの話。
(略)
しかし、おかげで私は、ハチ公から旭屋書店までの道のりをおぼえ、その後一年間に、ハヤカワの文庫本を買いまくった。それでしばらくは、「ほら、おまえの彼氏ーーハヤカワの社員の・・・」と、わが恋人殿から、からかわれていた。まことに、ハワ(ママ)カワ書房は、彼を表彰すべきであると思う。

1978年入社のこの早川書房の社員、今では50代と思われるが、現在も勤めているだろうか。