『大正十二年版年刊歌集』(関根書店、大正12年7月)の編纂者は、石榑千亦、橋本東聲、尾山篤二郎、川田順、吉植庄亮、太田水穂、前田夕暮、松村英一、窪田空穂、古泉千樫。大正十三年版も関根書店から刊行されている。北原白秋の前田宛書簡を見ると、この年刊歌集の発行を巡り、関根書店の関根喜太郎と一騒動あったようだ。
大正13年3月30日付 三君の寄合書昨日ふつと三枚発見、実は尾山が二泊して昨日上京した。その間酒をのんでゐたから葉書のことは知らなかつた。関根は僭越故僕は一喝しておいた。あれで出すのがあれば関根を編輯委員長とでも思つてゐる愚物兼不見識漢だらう。僕は君たちがどうして出すのかと思つておどろいてゐた。「日光」が出るのが待ち遠しい。
3月31日 乱暴な矢代は僕が関根のいふことに盲従するとでも思つたかしら、ダメだな
4月3日 年刊歌集に加入せぬことは、「日光」と関係なしに考へ度い。でないと、そのために断るやうにとられると迷惑する。とにかく、尾山にきくと今度は吉植の番だといふが、関根が一人で、集めてゐる。で何等の銓衡もない、関根がこれ等の権威を持つてゐるやうで愚の極だ。尾山は怒つてゐた
4月22日 関根が十九日にやつて来たので取つちめておいたが、たうとう窪田氏から手紙を寄越して来た。吉植が今度はやる由。見識さへ立てば歌は出さなくてはなるまい。
関根も色々問題ある人物(「関根喜太郎と高橋新吉」参照)だが、年刊歌集の編纂についても、出しゃばっていたようだ。
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小谷野とん版浮雲から引用する論文あり。鵜養幸雄「公務員の「身分保障」」『立命館法学』2010年。
二葉亭四迷『浮雲』は、主人公の内海文三が免職された話から始まるが、人員整理に際して「特に理由なく」免職された状況が、同僚との会話、納得がいかないことをつぶやく独り言及び叔母からの叱責の中で記されている。(略)(なお、小谷野敦『もてない男訳 浮雲』(略)では、「今では官庁でおいそれと職員をクビにしたりできないが」と解説を加えている。)
- 作者: 小谷野敦
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