神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

谷崎潤一郎が描いたRussian Barの開店時期

谷崎潤一郎大正4年11月『新小説』に発表した「獨探」に「Russian Bar」が出てくる。「露西亜生れの魔性の女が銀座の裏通りに怪しげなバアを開いたと云ふ事を新聞で知つた」とか、パウリスタに寄った後、そこに向かったという記述がある。この店については、細江光先生の「谷崎潤一郎マゾヒズム」によると、生田蝶介「私娼に引かれて」(『解剖刀下 女百態』須原啓興社、大正5年4月)に、京橋区南佐柄木町二番地に「露西亜カフエホール」があり、ローザ、リレー、ルーシーの三人の女がいたが、三ヶ月で閉鎖されたことが書かれているという。
ところで、山本有三の日記にもこれらしい店が出てくる。大正3年10月31日の条に、木下八百子と京橋区南鍋町のパウリスタに行く途中、「佐柘(ママ)町ノ所ニ来ルト、先頃出来タ露西亜ノ淫売ヤノ店ヲ指シテ、女ノ化粧シテル影法師ヲ笑ヒ乍ラ二人ハ通リ過ギタ」と書かれている。同一の店と見てよいだろうか。そうだとすると、「Russian Bar」は大正3年10月頃の開店ということになる。