神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

親切すぎる板垣一二三満鉄営口図書館長

宋斗会『満州国遺民 ある在日朝鮮人の呟き』(風媒社、2003年6月)に、板垣なる満鉄の図書館長が出てくる。

営口の新市街には、満鉄の図書館があった。田舎の町だからそんなに大きなものではなかったが、その図書館の館長であった板垣さんという人が、どうしてか知らないが、親切にしてくれた。その図書館に並んでいる本に関して、「どれでもいいから何冊でも好きなだけ持っていきなさい」ということで長期貸し出しをしてくれたり、そのうちには「手元に残しておきたい本があれば、残しておきなさい」とまでいってくれた。何ともう(ママ)ルーズともいえるが・・・。それどころか「新聞なんかで新しい本を見つけ、読みたいというものがあれば、買ってあげるから」と。ずいぶん親切にしてくれた。

「板垣」は、板垣一二三である。『第三版満洲紳士録』(昭和15年12月)によれば、

板垣一二三 営口図書館長
[出生]明治33年7月
[本籍]小倉市木町
[学歴]大正12年明大専門部商科卒
[経歴]大正14年8月満鉄入社、大連北公園・本渓湖・近江町各図書館勤務、埠頭・大連各図書館司書、瓦房店図書館長を経て昭和12年11月現職に就き、同12月退社、引続き在任す

図書館長としては親切すぎると思われるが、この板垣は戦後無事引き揚げただろうか。
なお、宋は、前掲書の「年表」によると、昭和48年春から京大近くの鴨川の橋の下で暮らすが、秋、京大熊野寮委員会から寮の一室を提供され、亡くなるまで熊野寮で起居したという。