平井一弘『あるモダン・ガールの昭和初期』に、ポール・ケートが主宰した東京インターナショナル倶楽部が出てくる。大正15年4月23日付の警視総監文書によると、日本人、朝鮮人、台湾人などの社交倶楽部だが、危険だから要注意とされているという。同書では、第二回定例会について、「大正十五年一月（？）」とされているが、この時、満川亀太郎が出席していたようだ。『満川亀太郎日記』によると、
大正15年1月23日 東京国際倶楽部
午后五時半神田今川小路二ノ一 明華楼
権無為、馬伯援、何庭流、陳福安、比律賓某氏、ケート、平野英一郎、下中弥三郎、石本恵吉、柴尾与一郎、吉江勝操、満川亀太郎、国田耕一、其他諸氏
また、前掲書によると、第四回定例会は大正15年3月14日本郷区元町の文化「ハウス」で開催され、高津正道、平野英一郎、永井叔、大橋悠歩、佐藤スミ、ケート、朝鮮人権無為、同、元鐘麟、安南人陳福安等26名が出席したという。
この朝鮮人「権無為」は秋田雨雀日記に出てくる人で前から気になっていた人だ。同日記の大正11年3月16日の条には、ある人から聞いた話として、「権無為はスパイらしいといっていた。注意してみよう」とあるのだ。
また、安南人の陳福安は、同日記大正8年10月19日の条（2007年9月4日参照）に出てくる陳と関係があるかもしれない。なお、『満川亀太郎日記』の「主要登場人物録」には、陳について「（生没年不詳）1908年来日、早大卒、中国で日本語教師、天津市政府外交科長、ベトナム復国同盟会外務委員」とある。ただし、『早稲田大学校友会会員名簿』（昭和9年12月）には、陳福安の名はない。
（参考）ポールの母エラと大アジア主義者については、2009年6月18日参照。
