神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

黒岩比佐子さんと田口ランディさん

「古書の森日記」は、黒岩比佐子さんが亡くなられた後も、田口ランディさんらの代筆により続いている。かつて、黒岩さんは、田口さんについて、次のように書いている*1

彼女のペンネームは「田口ランディ」。知り合ったのが十七年も前なので、いまだについ旧姓で呼んでしまうのだが、二十代の一時期、私たちは同じ会社で働いていた。(略)
久しぶりに再会したのは、お互いが三十代半ばの時。当時、私は親の介護問題に直面していて仕事どころではなく、精神的にも落ち込んでいた。すると、彼女も自分の両親と兄のことを語ってくれた。(略)
しばらくして、今度は彼女から、本を出版するという電話があった。正直なところ、友人の快挙を祝う反面、同じライターとしては、うらやましさと悔しさが入り交じった気持ちで、これは負けてはいられない、という気持ちにさせられた。

この後、黒岩さんは、前から気になっていた井上孝治の足跡を追いかけ始めることとなる。

一方の田口さんは、「音のない世界の天才写真家」*2で黒岩さんとそのデビュー作『音のない記憶 ろうあの天才写真家井上孝治の生涯』(1999年10月、文藝春秋)について次のように書いた。

黒岩さんは私の対極にいるような人だった。彼女は真面目で、いつも真摯で、責任感が強く、根気強く、物事を先の方まで考え(悪く言えば心配性で)、字がきれいで、質素で、完璧主義だった。そのすべてが私にはない素養だった。(略)きっと緻密に完璧に取材したのだろうなあ、彼女はそういうルポライターたる素質を持っている人だ。くそお、うらやましいぜ。私は彼女の十〇の一でいいから根性と緻密さが欲しい。

黒岩さんと田口さんは、親友でもあり、ライバルでもあったのだろうね。わしも、いよいよの時は、誰ぞ*3にブログの代筆を頼もうかしらね。

(参考)田口さんのブログ「http://runday.exblog.jp/15470591/

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*1:「2つの「出逢い」」『潮』2001年11月号。

*2:初出誌不明。『できればムカつかずに生きたい』(晶文社、2000年10月)所収。

*3:わしが、「誰ぞ」という場合は、ご案内のとおり、書物蔵氏を指す。