神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

スウェーデンボルグの『天界と地獄』をたたえた三浦関造と三島由紀夫

明治43年3月鈴木大拙は、スウェーデンボルグの『天界と地獄』を刊行*1。以降、スウェーデンボルグに関心を持つ人が増えた。
三浦関造は、『教育の世紀』3巻4号(大正14年4月)掲載の「神秘」で、

スウエデンボルクを近代の代表的人物の最も偉大なるものとしたエマーソンはさすがに達見家である。
エマーソンの論文には真に驚倒させられるものがある。秋骨先生の訳文はその魅力を現はしてゐない。私の友人井箆節三君は、「エマーソンの神秘」といふ論文をかいて博士論文に提出せよと私にいふた。
そのエマーソンが見たスウエデンボルグである。ス氏の「天国[ママ]と地獄」は文学的著作ではない。それは実有の神秘を説いた新科学書である。

とした。


三島由紀夫は、昭和21年9月13日付け川端康成宛書簡で、次のように書いた。

やつとこの十一日に試験がすみました。(略)十一日は籠をにげだした小鳥のやうに神田の古本屋を歩きまはり、六年来探してゐたスウェーデンボルグの「天国[ママ]と地獄」をみつけて有頂天になりました。


東浩紀は小説『クォンタム・ファミリーズ』で、並行宇宙では、「神秘思想家、カルト信者、オカルト研究者の群れがネットに押し寄せ、半世紀ぶりの反合理主義、反科学主義のブームが世界を覆いました。スウェーデンボルグが復活し、ユングが飛ぶように売れ、スピリチュアリズムが流行しました」とした。こちらの世界では、ユングはともかく、スウェーデンボルグはなかなかはやらないと思うが、東の小説は三島由紀夫賞を受賞した。

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うっかりしていたが、黒岩比佐子さんの近著は、『古書の森 逍』から『古書の森 逍』に改めたらしい。

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田中貴子先生もつぶやき始めた→「http://twitter.com/takakotanaka

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由良君美の名前を見かけた。
岡崎一・野口肇『教育者としての本間久雄 ある文学者の素顔』(文化書房博文社、2010年3月)の「跋文」。

かねての約束どおり、この跋文は本来なら故由良君美先生(東京大学名誉教授)にお書きいただくはずだったが、不幸にして久しい以前に鬼籍に入られた。また、永らく御無沙汰している亀井俊介先生(東京大学名誉教授)に御願いするのも非礼と思い、僭越ながら岡崎が(野口の了承を得て)代りに書くことにした。

何年越しの仕事だろう。

*1:発行者は、英国倫敦スエデンボルグ協会代表者鈴木貞太郎(大拙の本名)。発売元は、麹町区有楽町三丁目一番地の有楽社。