神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

もてない留学生はカナダの魔窟を放浪したか

オリンピックでカナダの日本人社会も盛り上がったことであろう。百年前の1910年にもカナダの日系移民を驚かす出来事があった。バンクーバーの大陸日報社から日本人経営の売春宿の実態を暴露する『加奈陀の魔窟』が発行されたのだ*1。この本は稀覯書で、国会図書館にも複写版が存在するだけで、ヨコジュンさんも長い間探求して、ようやく入手したという*2。この本を使ってカナダの「魔窟」の経営者や娼婦のその後を探ったのが、晶文社の工藤美代子『カナダ遊妓楼に降る雪は』である。この本を読むと、ノンフィクションライターはどこまで真実を明らかにしていいものか、色々考えさせられるものがある。

さて、『加奈陀の魔窟』が発行されて80年後、あるもてない男が、バンクーバーブリティッシュコロンビア大学に留学した。魔窟を放浪したかどうかは、一つの謎である。

(参考)工藤さんの本の「あとがき」には、平川祐弘先生への謝辞が述べられている。

最後になったが、つたない私の本を、いつも必ず終りまで読んで、御批評下さるのが、東大教授、平川祐弘氏である。身に余る光栄とは思うが、同時に氏の毒舌には何度も悔しい思いをさせられた。ところが最近、あるパーティーで、平川氏の無二の親友である筑波大教授、田代慶一郎氏が、「彼の毒舌を封じようと思ったら、今度の本を彼に捧げることですな。」と誠に深遠なる知恵を著者にさずけて下さった。したがって、今までの“毒舌”に対する、心からの御礼の気持ちを込めて、本書を敬愛する平川祐弘氏に捧げることとする。

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黒岩さんの昨日の書評が、もう読めちゃいます→「本よみうり堂

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わすの蔵書も時々行方不明になるが、事件かしら。
イアン・サンソム『移動図書館貸出記録1 蔵書まるごと消失事件』(創元推理文庫
蔵書まるごと消失事件 (移動図書館貸出記録1) (創元推理文庫)

*1:著者の長田正平は、石上露子の「不滅の恋人」だという。

*2:岩見照代編『近代日本のセクシュアリティ7』(ゆまに書房、2007年3月)で復刻されている。