神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

国枝史郎と原阿佐緒の酒場

秋田雨雀の日記に、国枝史郎を囲む会も出てきた。

昭和5年5月7日 午後六時ごろ山水楼の国枝君の会へいく。(略)国枝君はバセドウ氏が殆んど半癒していた。(略)原阿左(ママ)緒という女性にはじめて逢った。魅力のある顔だがかなりなお婆さんだ。白井喬二君の幹事で松居、長谷川、甲賀、下中、生田の諸君と感想を述べた。支配階級のために大衆文芸が利用されないように注意した。国枝、生田、白井、高桑君達と阿佐緒の店に寄った。


どういう趣旨の会か不明だが、名前の出てくる国枝、白井、長谷川伸甲賀三郎、生田蝶介、高桑義生は、下中弥三郎の創立した平凡社の『現代大衆文学全集』の執筆者。松居(松翁?)は不詳。原は、日本女子美術学校時代(明治37年入学)に国語の教師だった下中に短歌の手ほどきを受けて以来の仲である。この時は、まだ数えで43歳。原の年譜によると、この月に数寄屋橋畔に酒場「蕭々園阿佐緒の家」を開店するが、翌月にはやめている。秋田らの寄った「阿佐緒の店」がこの酒場だとすると、貴重な記録である。

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黒岩さんの今年の初仕事(?)。読売新聞の書評は、津野海太郎『したくないことはしない―植草甚一の青春―』(新潮社)でした。片山慶隆『日露戦争と新聞』(講談社選書メチエ)かと思っていたオタどんは、まだまだ未熟。