神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

あちゅいけどさわやかな一冊

安西冬衛の日記には、ボン書店の鳥羽茂は二度しかでてこない。
一つは、昭和8年2月21日の条で「「亜細亜の鹹湖」記要」として、第二詩集である同書の寄贈先などを記録した中に、2月19日のこととして、「鳥羽君より亜細亜の鹹湖予約者の氏名を通知してくる。予約者二十一名、発行してからの注文者十名。感慨多し、仲々小額にても予約してくれるひとはよくよくのひとである」とある。もう一つは、同書店の鳥羽と断定はできないが、9年10月5日の条に「中岡*1、丹野*2、河井*3、鳥羽」とあるものである。


ボン書店の創業者鳥羽の生涯を探った労作が内堀弘『ボン書店の幻』(ちくま文庫)である。黒岩読売新聞読書委員が、日曜日の同紙の特集「夏にピッタリの「アツい本」」に選んだのが同書であった。確かに胸を熱くする一冊であるが、それとともに読後感はさわやかと言うべきものであった。


さて、同じく熱く、かつ、さわやかな黒岩女史の本が読めるのはいつのことになるであろうか。11月刊行予定とされる『古書の森逍遥』であろうか。

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「7時28分の恋人」は、しばらく夏休みみたい。しょぼーん。

*1:中岡宏夫と思われる。

*2:詩人の丹野正と思われる。

*3:河井酔茗と思われる。