神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『フォーチュン』にも登場していた藤澤親雄『神国日本の使命』


高島秀之『嫌われた日本 戦時ジャーナリズム』(創成社新書)によると、『フォーチュン』1944年4月号の日本特集号の「平均的日本人」に藤澤親雄の『神国日本の使命』が出てくるらしい。

とりわけ、フジノ氏が気に入っているのは、一つは大政翼賛会の理論家である藤沢親雄教授の著作『神国日本の使命』にある「この度の大東亜戦争は、第二の天孫降臨であり、その精神は世界の人類を救済せんとするものである」という言葉である。


「フジノ氏」は、架空の人物で、平均的な都市の中産階級の市民として、明治27年生まれ、友人と共同で高級紳士服の店を銀座に構えている中年の紳士という設定である。こういうおじさんが藤澤のトンデモ本2006年6月3日参照)を読んでいたかは、疑問だが、藤澤の著作を取り上げるとは、戦時下のアメリカの情報収集能力もたいしたものである。この「平均的日本人」を執筆したのは、クロード・A・バスというフォーチュンの編集スタッフで、マニラで高等弁務官をしている時に日本軍にとらわれ、1942年から43年まで日本で抑留された後、交換船で帰国。1948年から49年にかけてマッカーサー司令部に招かれ、日本の占領政策における情報・教育部門にかかわったという。


(参考)藤澤親雄は、ウィキペディアにもはてなのキーワードにも立項されていないので、知名度はまだまだ低いと思われる。それでも、最近では大塚英志の小説「もどき開口 木島日記完結編」『怪』26号、2009年4月に次のように登場するので、少しは名前を覚えてもらえるか。

偽書をもっともらしく見せるのは君の仕事でなかったかね」
男はそういうと名刺入れから名刺を出して本の上に置いた。
「これを翻訳して私のところに届けていただきたい」
名刺には独逸哲学博士 藤沢親雄、とあった。