神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

トラウマの中公新書


小谷野敦氏というと、『もてない男恋愛論を超えて』がベストセラーになったため、ちくま新書のイメージが強い。しかし、新書デビューは中公新書の『夏目漱石を江戸から読む―新しい女と古い男』(1995年3月)である。この新書が、猫猫先生には痛い思い出の一冊でもあるらしい。『新編八犬伝綺想』(ちくま学芸文庫)の「文庫版のためのあとがき」によると、

五年経って、今度は平川祐弘先生の紹介で二冊目の本を出したときは、また同じように黙殺されたらどうしようかという恐怖心から不安神経症になってしまい、事実一九九五年春に出版されたその本の反響は、第一作より少しはまし、という程度で、どこからも、本を書いてくれとか、雑誌に原稿を書いてくれとか、言っては来なかった。その夏、私は鬱状態に陥り、何をする気にもならず、廃人同様の毎日を送っていた。


この新書、現在でも品切れ扱いではなく、入手可能のようだ。少し前だが、柴田勝二『漱石のなかの<帝国>−国民作家と近代日本−』(翰林書房、2006年12月)でも「とりわけ坊っちゃんを江戸っ子ではなく「武士」の形象として眺める視点は、それまでの『坊つちやん』観を組み替える意味を持つといえよう」と評されていた。そろそろ、二冊目の中公新書が期待されるところか。

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高井尚之『日本カフェ興亡記』(日本経済新聞出版社)。参考文献に林哲夫『喫茶店の時代』(編集工房ノア)を挙げていた。しかし、長谷川泰三『日本で最初の喫茶店「ブラジル移民の父」がはじめた―カフエーパウリスタ』(文園社)は参考にしていないようだ。

日本カフェ興亡記