神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

穂積陳重の法理研究会と催眠術


穂積歌子の日記には、催眠術ネタも出てくるのじゃ。

明治37年1月21日 旦那様午前大学、夕より法理研究会へお出。医会と連合にてメスメリズムの実験を行はれしよし。


原注:「メスメリズム」。前年「催眠術」と称する詐欺事件が頻発。当局が取締法規を検討中、との記事が「日本新聞」三十六年五月五日に見られる(32・10・8参照)。法理研究会としては異色の企画。


「32・10・8」は「32・10・28」の誤植と思われ、同日の日記には「夕飯後居間にて土産の羊羹皆々とたべ、貞三真六に催眠術施すと云ひて顔に墨をぬらするたはむれしたり」とある。「貞三」は穂積夫妻の三男、「真六」は真六郎で四男。


この頃、歌子の夫穂積陳重が主宰する法理研究会は十日医会と合同で催眠術の取締りについて討議していた。『法学協会雑誌』22巻2号(明治37年2月1日)中の「法理研究会記事」によると、37年1月21日に「塚原氏*1福来友吉氏の催眠術に関する実験」が行われている。

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香川由紀子「女学生の絆−明治二十年代の『女学雑誌』掲載小説を通して−」(『言葉と文化』9号、2008年3月、名古屋大学大学院国際言語文化研究科日本言語文化専攻)に、小谷野敦『男であることの困難 恋愛・日本・ジェンダー』からの引用あり。猫猫先生のファンかしら。

*1:「催眠術のデモンストラチォン」(『催眠術及ズッゲスチオン論集上』南江堂書店、明治37年3月)を執筆した塚原傳。