神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

 創刊号コレクター台北帝国大学附属図書館司書裏川大無


中村忠行「書かでもの記」(『山邊道』20号、昭和51年3月)によると、

この様な雰囲気に、吾々も多分に影響された。そして、文化祭の折に、文藝部主催で、明治・大正・昭和の文藝雑誌展を開いた。出品の大部分は、大学の附属図書館に司書をされてゐた裏川大夢[ママ]氏の蒐集に仰いだものである。裏川氏は、創刊号の蒐集家として、日本でも有名な方であった様である。無心を言って、出陳を需めた新しい雑誌の中に『文藝首都』があり、会期直前に届いたことを記憶してゐるから、昭和八年五月のことで、目録なども作った筈である。


中村は、当時、台北高等学校の学生で、台北帝国大学の国文談話会にも出入りしていた。「この様な雰囲気」とは、台湾愛書会による『愛書』発行や、展覧会開催をいう。『文藝首都』は昭和8年1月創刊。


裏川の著作としては、「図書館異聞」(『書物展望』昭和15年10月)、「台湾雑誌興亡史」(『台湾時報昭和10年2月-7月、10月-12月)、「明治三十年代の台湾雑誌覚え書(一)」(『愛書』第1輯、昭和8年6月)・「同(二)」(同誌第2輯、昭和9年8月)、「献辞の表情」(『書物展望』昭和17年7月)などがある。「台湾雑誌興亡史」は、『日本統治期台湾文学文芸評論集第二巻』(緑蔭書房、2001年4月)で読める。そういえば、今月号の『彷書月刊』は、台湾ならぬ満州の雑誌メディアの特集だすね。

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吉村定吉・・・朝鮮総督府逓信局嘱託。[閲歴]明治19年3月生、大正5年東大英文科卒。秋田県立図書館長、京城大附属図書館長兼同学助教授(『大衆人事録』昭和18年版による)。戦後、黒岩さんの弦斎本を除いて、唯一「一元同化力」の中尾弘明について言及した本の著者である医者の先妻の姉の夫に当たるという。なんか、寄り道ばかりして肝心の中尾との関係は引き続き調査中。


追記:吉村は、『日本の植民地図書館』に、京城帝国大学司書官で『朝鮮之図書館』の編集長として出てくる。