神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

限定私家版『細雪』の行方を追え!(その1)


小谷野敦谷崎潤一郎伝』によると、昭和19年7月に発行された限定私家版『細雪』上巻は、宇野浩二永井荷風、土屋計左右、渋沢秀雄志賀直哉舟橋聖一らに恵贈されている。この他に、木下杢太郎にも贈られていたことは、昨年1月15日に言及したところである。木下以外にも何人か発見したので、不定期連載として紹介していこう。


まずは、折口信夫戸板康二折口信夫坐談』によると、昭和20年のこととして、

○四月になった。出石の茶の間で、先生は、谷崎潤一郎氏から贈られた私家版の『細雪』を読んでおられた。


としている。小谷野氏の労作「谷崎潤一郎年譜」を見ても、この時点で谷崎と折口に面識があった気配はない。時局柄、こっそりと配っていたはずで、親しくもない人には贈っていないと思われるのだが。谷崎の人的ネットワークにはまだまだ不明なことが多い。