神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

戦時下の極楽とんぼ(その11)


戦時下に里見とんがあやす〜ぃことをしていた。
高見順の日記によると、

昭和20年5月16日 今日は終日店番を勤めた。里見紝、長田秀雄氏等が来た。里見さんはもう六十近いはずだのに艶々した顔色をしていて、小柄な身体に精力が漲っている感じだ。弁当を持って来た妻に、
「里見さんは若いねぇ、−驚く」
といったら
「このせいじゃないかしら」
と手をひろげた。里見さんが指圧療法に凝っているのは、鎌倉で有名な話だった。
「先生はお願いすると、なんでも出張してまで癒して下さるとかいう話よ」
と妻がいった。


この「指圧療法」だが、ただの指圧ではなかったようだ。「體の話」『蝉の抜殻』(鎌倉文庫、昭和24年7月)によると、

とにかく、或る動機から、それまで大嫌ひだつた民間療法にかゝり、永年の痼疾たる痔と水蟲とが根治したところから、岡田茂吉といふ人の始めた、その、掌の平を使ふ方法に興味をもつた私は、爾来五年、千人以上の人の體に觸つてみた。


熱海のMO美術館には一度行ったことはあるが、岡田のことはよく知らないよ。これも、大東亜心霊学の一エピソードになるかしら。


                                                                                                        • -


何かとお騒がせの朝日新聞のようだが、昨日は読書欄の「文庫・新書のおすすめ新刊」に小谷野敦『聖母のいない国』(河出文庫)が挙がっていた。


                                                                                                          • -


誰ぞ*1も真っ青の、引越し魔である四方田犬彦氏の『四方田犬彦の引っ越し人生』(交通新聞社)が出てた。「後記」によると、百冊目の著作書物らしい。すごい!

*1:もはや引っ越すことはなくなったみたい。