神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

戦時下の霊術家


戦時下では、いかがわしい霊術家は一掃されていたのかと思っていたが、ところがどっこいそんなことはなかった。森田草平の日記によると、

昭和19年3月22日 (略)午後一時半より西荻窪の霊動会へ行く。(略)石川氏の夫人に会い、更に同氏の指圧を受く。寔に上手也。来る月曜日から霊動に出席する旨を約束して辞去。(略)なお石川氏から年を聞かれ、六十四才と云うと、我も然り、巳年でしょう、奇縁なりと云われた。


    3月27日 午後より長良と連れ立って石川氏へ行く。霊動を見たが凄まじい運動なり。これが無意識もしくは霊の支配で出来るとすれば大したもの也。長良も俺も指圧の療治をして貰って午後五時帰宅。


    3月28日 午後一時から雨を冒して石川氏へ行く。おれは体力がないためか、霊動十五分位しかつづかなかったが、長良は一時間半に及び、最初から最後まで一人でやっている。不思議なもの也。雑念が起っても、流してしまえばよい、追懸けるな、追懸けた時、気合をかけるのだそうな。
  

    5月6日 午後二時から霊動へ行く。一時間半やって午後四時半に終る。おれの霊動はまだ自然に出るとは思わないが、毎日やるごとに力が出て来て、楽になった事はたしかだ。ただ反動をつけてやらぬと自然に運動が出来ぬ、これは自然か否か。又やってる間に、痛い所が生じて、そこを運動したいと思う。やりたいと思ってやるのは自然の様でもあるが、意識してやることになる。これは自然か否か。石川夫人に聞くとただ疑わずにやれとある。その内にどうにかなるだろう。


    5月23日 午後より霊動に赴く。四つ這いに匐って両腕と爪足で身体を支え、畳につけずに上下する運動をしたら、スッカリ労れて、グロッキイの状態に入る。


「長良」は森田の次男。西荻窪の「石川」とは、どういう人物か不明。かつての霊学士の残党か。