神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

 日本力行会の海外巡回図書箱


阿部次郎の日記に「海外巡回図書館」なる言葉が出てくる。

大正10年5月4日 次いで日本力行会の山田某本を貰ひに(海外巡回図書館の為)来る、 


この「海外巡回図書館」は正しくは「海外巡回図書箱」である。
『日本力行会百年の航跡』によると、

それから植民地内の家庭を訪ねたが、どの家庭にも図書らしいものはない。会長*1は「巡回図書箱」を思いついた。これは頑丈な箱に書籍を入れ、蓋に図書目録を記して村から村へ巡回するもので、帰国後この計画を広く訴えた。教育会長の沢柳政太郎博士、国民新聞社徳富猪一郎などの尽力で二万冊が集まり、会及び現地では巡回講師の守屋保吉がその世話役となった。/(略)/「海外巡回図書箱」は守屋が主管となって寄贈図書運動を開始、一年間で二万冊が集まり、一部をアルゼンチン、ペルー、メキシコ等に発送、残りを守屋がブラジルへ携行配布することになった。


日本力行会は、明治30年苦学生の救済を目的とする東京労働会として発足。33年に日本力行会に改称、海外移住者の教育、援助へと運動を拡大した。二万冊の内、里帰りした本はあるだろうか。


追記:本には「力行会海外巡回図書箱」のゴム印が押してあるという。

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『比較文學研究』は書店にも置いてあるが、3700円もする。書店で買う人がいるのかしら。
猫猫先生が、佐々木邦『いたづら小僧日記』の原作に関する自身の研究をアップしてくれている。

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英語青年』4月号は「ロリータ」特集。勘違いして買う人はいないかすら。

*1:第二代会長の永田稠。大正9年に南米を一巡した。