神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

オタどん、猫猫先生を撃破


猫猫先生が再び裏切ってから、幾月たったことか。
オタどんは、「この恨み、はらさでおくべきか」(笑)と、逆襲のチャンスをうかがっていた。ようやく、その機会が来たようだ。


3月1日に紹介した、谷崎潤一郎、濱本浩、佐藤紅緑、仲木貞一をめぐる事件については、猫猫先生にしても、解明されていなかった。しかし、オタどんは、その謎を解いたのである。


谷崎潤一郎大正13年10月12日付け濱本浩宛書簡には、

ところで佐藤紅緑氏から別紙の如き書面が来ましたが、此れでは小生何のために仲木氏に頼んだのか訳が分らなくなり、不愉快千万です。依つて僕は此の面倒な問題から全然手を引き、前言を取り消す旨を仲木氏へ申送りました。紅緑氏には別に手紙を上げません。いづれ近日君に会ふまで放つて置くつもりです。


とあるが、全集では「(別紙略)」とされている。


しかし、その別紙書簡は『文学者の手紙3 大正の作家たち 芥川龍之介島崎藤村・武久夢二』(博文館新社、2005年9月)に収録されていた。


この佐藤の大正13年(推定)10月10日付け谷崎宛書簡によると、

今日仲木氏*1から手紙が参りまして戯曲全集に出品せよとの事ですが、その件に就ては読売新聞の晴雨計*2で鉄假面といふ人が二度も吉蔵氏を攻撃しましたし又た吉蔵氏もそれに答へたりして*3八釜しい問題になりました。鉄假面といふ人は誰だかわからず、又た同氏は露はに儂の事を指して言たわけでもないが、儂の事だといふ事は一読して明瞭です。(略)
猶ほ仲木氏の手紙に「谷崎氏より懇篤なる書面を戴きました」とありましたので、儂は貴兄から儂のために先方へ忠告されたのだと推察します。御厚情は御礼の申上げやうもありませんが、貴兄を煩はしてまでもあの人達に儂の存在を認めて貰ふ必要もなく、先方では新聞広告や予約募集のポスターに既に顔触れを刷り込んでしまつたのを、今ま儂が急に割込むといふ事は儂に取つても先方に取ても困る事なのですから、今日仲木氏へ断はりの手紙を出しました。(略)


国民図書から発行された『現代戯曲全集』の人選をめぐる事件だったということがわかった。しかし、仲木は、中村吉蔵の下で編集に関与していたということで理解できるが、改造社の濱本がなぜ、関与しているのだろうか。その謎は残されている。
この発見も斯界の神様細江先生には、「今頃何を言っているの」と言われるかもしれない(汗


追記:撃破したつもりが、撃破されたみたい・・・

*1:原注:仲木貞一のこと。

*2:原注:「読売新聞」大正十三年九月二十七日および十月三日の「晴雨計」欄で中村吉蔵の「現代戯曲全集」の人選と編集方針を批判。

*3:原注:中村吉蔵は「読売新聞」大正十三年九月三十日号に「「現代戯曲全集」に就いて」で反論。さらに「鉄仮面」の反批判があり、久米正雄田中総一郎らも応酬した。