神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

依田学海と催眠術(その1)


『学海日録』の索引で催眠術を引く*1と、第10巻に次のような記述があることがわかった。

明治29年10月11日 ○荊婦と英人フラツクの催眠術を新声館にみる。(略)一人の童子を呼出し、フラツクこれに向て直立し、しばらく息を凝らすとみるほどに、童子忽ちうしろに向てどうと倒れて人事を失へり。(略)余、すゝみよりその体をさぐるに四肢強硬して死人に似たり。されど呼吸・脈搏・温度は異なることなし。(略)


この「フラツク」は快楽亭ブラック(石井貎刺屈)で、同年10月10日の東京朝日新聞に、同月9日から神田表神保町新聲館で「Animal-Magunetism Black,Ishii. 幻奇術」が開催されているとの広告が載っている。


ブラックの催眠術については、明治29年に神田の錦輝館で初めて公開され、同年10月30日から両国の回向院で興行されたことが知られている。学海先生が詳しい記録を残していたことには誰も気づいていなかったかな。


追記:甲斐みのり『乙女の東京』(出版:マーブルトロン、発売:中央公論新社)を見る。最近乙女も行くというおしゃれな古書店が載っていない!

*1:この索引は優れもので「書籍館(図書館)」なんて項目もある。