神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

澁澤龍彦が愛した谷崎潤一郎


人の本棚を見ると、その人の人柄がうかがえて楽しいものだが、著名人となると、雑誌の書斎拝見などで写真をみることができるぐらいである。もっとも、蔵書目録が刊行される稀なケースもある。そんな一冊、澁澤の『書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録』*1でつかのま楽しんだ。同書の東雅夫×礒崎純一「対談 書物の宇宙誌・解題」によると、

礒崎:xxii頁も日本の偏愛的作家です。小栗虫太郎『紅殻駱駝の秘密』、日夏耿之介サバト恠異帖』、神西清『灰色の眼の女』、堀口大學『花売り娘』、谷崎潤一郎『鮫人』、泉鏡花『鏡花随筆』、久生十蘭『母子像・鈴木主水』。谷崎なんか、全集が揃ってるから、単行本っていうのはあんまりないんですよね。でもこの『鮫人』という小説は、澁澤龍彦がことのほか好んでいたって出口裕弘氏が書いておられましたね。『サバト恠異帖』は書き込みがすごかったですよ。


谷崎の「全集」とは、いわゆる没後版全集のこと。第1巻、第12巻、第25巻、第26巻に書き込みがあるようだ。どんなことが書かれているのだろう。


澁澤が所蔵する『鮫人』は、昭和21年11月刊行の全国書房版。新刊で読んだとすれば、昭和3年5月生まれなので満18歳。前年の7月に旧制浦和高校に入学し、昭和21年頃はアテネ・フランセにかよい、フランス文学関係の書を集中的に読み始めたとされている時期に当たる。*2


追記:澁澤の蔵書目録には横田順彌編『日本SF古典集成』第2巻(ハヤカワ文庫、1977年)も挙がっている。収録作品は、
風流志道軒伝(平賀源内) 、月世界競争探検(押川春浪)、 シグナルとシグナレス(宮沢賢治)、 地球を弔う(中山忠直)、 星座の主(中山忠直)、 地球別離(中山忠直)、 未来への遺言(中山忠直)、 人工心臓(小酒井不木)、 卵(夢野久作)、 怪船人魚号(高橋鉄)、 偏行文明(木々高太郎)、 夜のロマンツェ(中谷栄一)、 宇宙線の情熱(大下宇陀児) 地軸作戦(海野十三) 。
なぜ、第2巻だけなのだろう・・・

*1:国書刊行会、2006年10月

*2:巌谷國士澁澤龍彦年譜」(『澁澤龍彦全集』別巻2(河出書房新社、1995年6月)所収