神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

明治45年新橋発特急備え付けの列車文庫


畏友にして盟友の書物奉行氏の「書物蔵」(12月2日分参照)が10万アクセスに達したとのこと。お祝いとして、ズショカンネタをアップしよう。といっても、ズショカンそのものとはちと違うけど。


『青年小泉信三の日記』(慶應義塾大学出版会、2001年11月)から引用。


大正元年9月11日 八時半の汽車で発つ。(中略)
列車の後尾に付いている展望車は、一等客の為めに設けたものである。籐椅子を並べて新聞書籍を備え付けてある。それから小図書館の設けもある。日本のもので「かげ草」などがあるのは不思議だ。坪内逍遥の「ハムレット」「リヤ王」などは俗受けするものだから別に何とも思わなかった。漱石の「猫(ポケットサイズ)」は背皮が汚くよごれている。如何に盛んに読まれるかが分かる。その外、大部分を占めるのは帝国文庫、有朋堂文庫等の叢書である。横文書では知らないものが多い。その中でもモーパッサンの「婦人の生涯」が表紙のすり切れるまで読まれてあるのは注目に値する。ドォデエ、トルストイ、フォガッツァロの作物も一冊ずつあった。旅行記、紀行文の類は沢山あるようだ。


小泉がイギリス・ドイツ留学で神戸から出国するために乗った列車に備え付けられた小図書館の描写である。面白半分ブログだから先行文献のチェックは勘弁してほしいが、これについてはたまたま知っている。八木福次郎『古本便利帖』の「列車に備えつけられた本」で、明治45年6月から始まった新橋−下関間の展望車付き特別急行における備え付けの書架に関して、「逍遥博士のシェークスピア叢書、日本文学全書、お伽噺、其他、外書の少しを見受けた」という「特別列車の試乗記録」が紹介されている。


さて、書物奉行氏は「げ、げっち」とくるか、はたまた「キター」か「ガーン」か!?