「翻刻『春城日誌』(二)」(「早稲田大学図書館紀要」第27号)中明治36年5月18日の条に、
十一時より和田万吉(帝国大学図書館長)を図書館に訪ふて館中之設備を見、終に帝室より永代預となりたる喇嘛経(日清戦役黄寺より分捕たるもの)、其他珍書若干を観、午後辞して帰へる。
と、初代早稲田大学図書館長の市島春城が書いている。
日清戦争における戦利品も、東大図書館に存在したのだ。関東大震災で焼失したのだろうが。
ところで、この「黄寺」は、日露戦争中に、契丹古伝が「発見」された奉天郊外の黄寺とは、別物だろうけれど、原本も写本も不明とされる契丹古伝が、どこかに存在するとしたら、案外東大のどこかに埋もれているのではないかと、わすは思う。
追記:東條文規『図書館の近代』によれば、
日清戦争開戦後の一八九四(明治二十七)年に、宮中顧問兼帝国博物館総長であった九鬼隆一が政府や陸海軍におくった「戦時清国宝物蒐集方法」に、「国光ヲ発揚スル」目的のために、収集(実は略奪)したものは「帝室ノ御蔵若クハ帝国博物館」の所蔵品にすると記されている。