もう一つ、日本占領時代を生々しく記憶に甦えさせられるのは、
撫順近郊に今でも残る「日本人戦犯収容所跡」である。現在、
歴史資料館となっているのだが、そこに展示してある資料のな
かに満州国裁判官を務めた飯盛重任(いいもりしげとう)の中国
侵略を謝罪する告白記録が残されていた。飯盛は満鉄との直接の
関係はないけれど、関東軍憲兵隊がデッチあげた「満鉄事件」の
裁判官を務めた人物でもある。関東軍の意志に従って、もちろん、
飯盛裁判官は有罪判決を下している。獄中で満鉄の調査員たちは
尊い命を落としている。告白文ではそのことを悔いていた。
飯盛に関しては、生前、タカ派裁判官であったとの程度の知識し
かないが、それが中国で侵略戦争を謝罪する告白文を残していた
とは、私には驚きであった。だが、飯盛は帰国すると、すぐに
再転向声明を発表する。なんとも軽い男だと思った。