その書物(引用者注:処女作『動学的経済理論』1950年
弘文堂刊)は有名になったが、誰からも真剣な反撃はなかっ
た。今から20年近く前にイギリスから帰って、学生時代に
親しくしていた京大百万遍入口前の井上書店を訪ねた時に、
主人が「あんた、ええ本書かれましたな。あの本高うおまっ
せ。一万円超しまっせ。それでもなかなかおまへんが」とい
うことだった。確かに値は上がっているのだろうが、これは
出版部数が少ないという希少価値であって、必ずしも日本で
の学術的貢献度を示しているとは思えない。
(参考)初出は「論座」1997年11月号〜1999年1月号