『丘の上サ上がつて』(中原中也記念館)中「中村古峡略伝」(曾根博義)から
『変態心理』は大正6年10月から15年10月まで足かけ
10年の間に全103冊を出した。
「変態心理」とは、常態・正態でない心理、すなわち異常心
理という意味で、当時の哲学や心理学や医学ではまだ学問の
対象として認知されていなかった個人ないし集団の異常精神・
心理現象全体を指していた。(中略)古峡以外の執筆者には、
前述の森田正馬、透視と念写を信じて東京帝大助教授の職を
追われた福来友吉、雑誌『心理研究』の主宰者上野陽一、
心霊現象や夢の研究で知られた小熊虎之助、犯罪心理学者の
寺田精一、性や売笑婦、民族学の南方熊楠、柳田国男、
金田一京助、文学者では中村星湖、萩原朔太郎、宮島資夫、
沖野岩三郎、綿貫六助、井東憲、高群逸枝、高橋新吉、
牧野信一、浅見淵ら、まことに多士済々である。