神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

日本SFファンダムのH君

佐藤弘ニ氏のぐれん舎が1979年12月に発行した『PADOMA』10号に「無署名エッセイ」として、「ファンと礼儀ーー怒りをこめてーー またはイニシャル当てクイズ」が載っている。原宿で開かれた某SF作家ファンクラブの親睦宴会での事件だという

突然、
「おい。そこの黒メガネ。皿とって」
こんな声がぼくの耳に飛びこんできた。知っている人は知っているが、ぼくはサングラスを愛好している。その場に居合わせた人間でサングラスを掛けていたのは二人(その声を発した当人とぼく)だから、その呼びかけがぼくに対するものであることは明らかである。
一瞬、何がなんだかわからなくなり、ふらふらと立ち上がって皿を手渡したのだが、再び腰を下ろした途端、無性に腹が立ってきた。ぼくはその男を全然知らないのだ。(略)「ねえ。そこの黒メガネの人」くらいなら納得できるだろうが・・・。しかも、どう見てもぼくの方が年上なのだ(年下なら構わないという意味ではない。為念)。何という暴言!
(略)

著者が、会の世話人Kに話すと、「H君が悪いが、まだ子供だから許してやってよ」、と言われたという。しかし、著者はH君はどう見ても二十歳ぐらいで、彼が子供なら二十二歳の自分も子供だと釈然としていない。その後、H君は、「酔っているんです」、と謝ったが、その後のはしゃぎ回りぶりや、叱られたことを人に話し、著者の事を訊いていたというから、いかに失礼で常識外れの言動をとったのか、理解できていないと著者は批判している。
そして、著者は、「これでは最近の若いSFファンは礼儀を知らないと言われても仕方あるまい」と結論付けている。私は、今でもこの怒りに任せたまま書かれたエッセイを読んで、「そんなことぐらいで怒るなよ」と思うが、それはともかく、このH 君とは、結局、誰だったのだろうか。