神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

『短歌前衛』及び『プロレタリア短歌』発禁処分の理由

私の「素人社の林田茂雄が一役買ったプロレタリア歌人同盟の結成」(9月12日)とyukunokiさんの「『短歌前衛』の発禁」で引用した『短歌前衛』に関する渡辺順三の回想は必ずしもあてにはならないようだが、同誌の発禁に関しては正しいようだ。発禁年表によると、該当号、処分日、「処分理由又ハ摘要」は

昭和5年3月号(3月1日) 武力革命の主張その他兵役呪詛の叫びを述べたる記事

  5年5月号(4月28日) 全般的に不穏なるメーデー記事、並びに不敬記事

  5年6月号(6月2日) 全篇

  5年7月号(6月30日) プロレタリアをして革命へ誘導

  5年9月号(9月4日) 全篇に亘り救援会活動の状況、暴力煽動共産党支持、官憲の暴虐に関する記事並びにプロ短歌のボルシエヴイキ化主張の記事

なお、紅玉堂書店の『プロレタリア短歌集』も昭和4年5月29日に処分を受けている。また、『短歌前衛』を改題した『プロレタリア短歌』も、昭和5年11月号が同月21日「「皇室に対する冒涜は」の歌及「鎌を磨いたか」と題する記事」を理由に、3(ママ)巻4号(6年4月1日発行)が同月7日に「皇室尊厳冒涜」を理由に、2巻7号(6年8月17日発行)が同月21日に「激烈なる文句多し」を理由に処分。後二者には、発行者として、林田茂雄とある。林田は、昭和6年の段階でも、発行名義人を引き受けていたことになる。
追記:『出版警察概観 昭和五年一月』の「無産階級文藝雑誌調(昭和四年)」によると、『短歌前衛』創刊号は「安寧注意」処分を受けている。

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10月20日までの東京大学附属図書館常設展示「坪井正五郎と明治のヲタク的世界」を忘れてはいかん。