神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

巌谷小波を追いかけてきた男たち


小谷野敦猫を償うに猫をもってせよ』(白水社)所収の「アンデルセンの同性愛」で、巌谷小波の四男大四が父の生涯を描いた『波の跫音−巌谷小波伝』に出てくる同性交際研究会について言及されている。この会のことが、三村竹清の日記に出てきて、面白いことが書いてあるので紹介。

大正7年11月13日 川喜田とゝけものとて古泉二孔 平治せんへい一缶受とる 同人之会にて巌谷小波 男色之話をしたりとてかたる 小波 独逸に居たる折 たのまれて同性愛研究之年報とかへ 風俗画報のぬきかきなとを基としてかきてやりし事あり 其会へ是非出席せよとてひる間の会へ出てたるに 諸国より三千人斗りきてゐて驚きたり 夜之会へハ大村仁太郎同行したるに この人鬚武者にて丈も高し 小波は美少年也 念者扱にされて困りしと 其会員にも研究派と実行派とありて 其後 独逸之貴族尋ね来りし事あり(略)
其時小波之子四才になるか チヨロチヨロと出て来たりしを怪訝な顔して眺め あれは何かと問ふ 自分の子也といひしに いとゝゝ失望したる面地にて 君はもうやめたのかといひたるよし 小波早速ホテルニ行き あの男ハ少々変なのたから 今後電話をかけてくれといひても いつも不在と断りくれと頼ミて置きしか 定めて失望して帰国せしなるへしと 其後にて貴族一人 これは研究派にて来りしとか 
風俗画報へ男色之事をかきしハ 赤松範一君之投書にて 同君之叔父なる通人之随筆によりて記せしものゝよし


ドイツから小波を追いかけてきたとすれば男版エリスとなるが、そうではないようだ。それと、チョロチョロ出てきた小波の子が大四なら面白いが、これも特定はできない。

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『ちくま』の笙野頼子「おはよう、水晶−おやすみ、水晶」は6月号で終結。著者による「謹告」に、「本作は不当な言論弾圧、訴訟予告、怪電話、ネット上の中傷、恐喝にも負けず、より具体的で苛烈な加筆修正を行った上、後日談一話を加え、予定通りの十月刊行を目指しています・戦いは続く!」とある。大変そう・・・


『WB』夏号の南陀楼綾繁内澤旬子けものみち計画の文豪擬獣化宣言(4)」は、林芙美子


創元SF文庫からキャプテン・フューチャー全集別巻として、野田昌宏風前の灯! 冥王星ドーム都市』。かつて、『SFマガジン』に掲載されたもの。よくぞ、やってくれた。