神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

谷崎潤一郎

谷崎潤一郎が飼っていた広東犬(その2)

谷崎の広東犬を目撃していた人がもう一人いた。 大阪朝日新聞出身でプラトン社の『女性』の初代発行人だった松阪寅之助(青渓)。 『モダニズム出版社の光芒』によると、高島屋の総合情報紙『百華新聞』27号(昭和2年1月11日)に、署名はないが青渓の取材に…

谷崎潤一郎が飼っていた広東犬

谷崎潤一郎が飼っていた犬や猫については、小谷野敦『谷崎潤一郎伝』に詳しい。これによると、谷崎は、大正15年2月、長崎の永見徳太郎宅で広東狗(チャウチャウ)を見て欲しくなり、上海の陳抱一から二匹送ってもらったという。それは、生後二三箇月ぐらいの…

谷崎潤一郎詳細年譜の作成者

『公評』で連載中の武田勝彦(早稲田大学名誉教授)「日本橋トポグラフィー」は、 ここ何回かすっかり谷崎潤一郎関係の論考になってしまっている。 少し古い話になるが、3月号の「第16回 谷崎潤一郎の領外帰向」の記述には少し問題があった。 そこで、こ…

金座後藤の末子としての後藤末雄さん

三村竹清の日記*1になぜか後藤末雄(谷崎潤一郎の友人)が出てくる。 大正7年11月3日 朝 竹栢園へ行く 後藤季[ママ]雄といふ人にあふ 肥たる鼻の大きなる五分刈之めかねをかけたる若き人也 帝国文学之編輯をして居る仏国文学をやる人之由 金座後藤之末子也と…

世田谷美術館の資生堂展

世田谷美術館って、確かさんまの「男女七人物語」(夏か秋のどっちだったか?)でお見合い場所のシーンに使われていたね。フランス料理のレストランもあり、おしゃれな美術館である。用賀駅から美術館までの途中にある散策路(短いけど)もよくできている。…

オタどん、猫猫先生を撃破

猫猫先生が再び裏切ってから、幾月たったことか。 オタどんは、「この恨み、はらさでおくべきか」(笑)と、逆襲のチャンスをうかがっていた。ようやく、その機会が来たようだ。 3月1日に紹介した、谷崎潤一郎、濱本浩、佐藤紅緑、仲木貞一をめぐる事件につ…

倉田啓明と坪内逍遥の関係

谷崎潤一郎や坪内逍遥の名を騙ったとされる倉田啓明。6月12日に紹介したところである。 その倉田と逍遥の関係に疑問が生じてきた。 逍遥の日記によると、 大正6年1月17日 倉田啓明より脚本稿を、イプセン模倣ニテ物に成らず 6月25日 朝 倉田啓明 「葛城の神…

曽野俊輔と宮川曼魚

谷崎潤一郎の無名時代の知り合いとされる曽野俊輔は、宮嶋資夫の『遍歴』に出てくる。 河上肇の『社会問題研究』*1が出てゐた頃、私が友人曽野俊輔に貸したところ、曼魚は慌てて仲田勝之助からそれを借りて机の上にのせた。そして曽野に、深川でこれを読んで…

辰野隆と村井弦斎

辰野隆「読書の思い出」『老若問答』(昭和25年12月)に、 「その頃ではないのですか、谷崎さんから露伴を読めとすすめられて、『縁外縁』と『対髑髏』*1を読んだとかいう話ですが・・・」 「それは中学五年時分だった。それもよく解らなかった。ああ、又思…

谷崎潤一郎のパトロン(その4)

谷崎潤一郎の『青春物語』に、 雑魚寝で一番悩まされたのは、大阪の宿にゐた時分、中井浩水君が新町の茨木屋に十日も二十日も流連してゐて、夜になると呼び出しの電話がかゝつて来る、(略)泊まるのはいゝんだが、浩水君は相方と一緒に別の座敷へシケ込んで…

谷崎潤一郎のパトロン(その3)

渋谷の松涛(しょうとう)というのは高級住宅街らしいが、そこには渋谷区立松涛美術館がある。私も、何度も足を運んだことがあるのだが、逃した獲物は大きかったと思っている展覧会がある。一昨年12月から昨年1月にかけて開催された「幻想のコレクション 芝…

谷崎潤一郎のパトロン(その1)

牛尾治朗の「私の履歴書」*1で祖父梅吉(1864-1934)について触れている所に谷崎潤一郎関係のネタがあった。 当時のことは人づてに聞くばかりだが、堂島の米穀取引所は、林市蔵理事長がのちに大阪府知事を務めるなど、社会的地位は相当のものだったらしい。…

谷崎潤一郎のパトロン(その2)

森山重雄『評伝宮嶋資夫』(三一書房、1984年9月)には、曽野俊輔という人が出てくる。 曽野俊輔は、播州出の成金でもあり実業家でもあった加東徳三郎の甥であった。宮嶋は二十二歳の頃*1、加東徳三郎商店に勤めたことがあるのでそれで知りあったのだろう。…

『新世間』編輯顧問谷崎潤一郎

紅野敏郎ほか『展望戦後雑誌』(河出書房新社、昭和52年6月)によると、 『新世間』は、昭和22年4月1日、世間社から創刊。表紙に「編輯顧問谷崎潤一郎」とあり、創刊号は谷崎の「熱海ゆき」を巻頭に、三好達治の詩、吉井勇の短歌が続き、第2号(昭和22年5・…

瀧川政次郎と谷崎潤一郎

さて瀧川政次郎だが、若い頃から谷崎潤一郎のファンだったようだ。 林達夫の大正12年8月1日付け谷川徹三宛書簡*1によると、 先日瀧川政次郎が来て、自分は専門上古事記を読んでゐるが、近藤栄一の小説は実に下らぬ、それにひきかへ潤一郎の歴史小説は、実に…

戦時下のトンデモ・ダ・ヴィンチ展

昨年の5月20日に紹介した戦時下のダ・ヴィンチ展。 高松宮は感想を記録してくれなかったが、天羽英二が日記に書いてくれていた。 昭和17年7月11日 午後2時乃至4時 和子ト共ニ上野産業館「レオナルドダヴインチ」展覧会 日本世界復興会 情報局 陸海軍主…

谷崎潤一郎責任編輯の雑誌

會津八一の昭和21年9月25日付け結城信一宛書簡*1によると、 先日谷崎潤一郎君の責任編輯といふ某雑誌の創刊号に歌をもとめられしも歌なしとして称して謝絶を致し候。もしありても谷崎氏の文学に比して拙者断じて下位にあるものとも思はれざる故謝礼は谷崎氏…

中山忠直と谷崎潤一郎を結ぶ線

『定本佐藤春夫全集』第36巻(臨川書店、2001年6月)所収の昭和7年(推定)4月24日付け添田知道宛の「辻潤後援会」の案内状に発起人として、 佐藤春夫 谷崎潤一郎 北原白秋 武者小路実篤 新居格 宮島[ママ]資夫 室伏高信 宮川曼魚 西谷勢之介 井沢弘 田中貢…

谷崎潤一郎・坪内逍遥を騙る倉田啓明

細江光『谷崎潤一郎 深層のレトリック』によると、『東京日日新聞』(大正6年12月13日、同月17日)に、倉田啓明なる悪文士が、8月15日、坪内逍遥の紹介状を偽造して『黒潮』に「結搏葛城の神」を売りつけようとしたり、谷崎潤一郎の名も騙っていたことが記さ…

古川ロッパと麻雀をする市河彦太郎

晶文社から復刊された古川ロッパ昭和日記。なぜか市河彦太郎が登場。 昭和18年10月30日 今日は麻雀連中が十時から来る。市河彦太郎と本田一平・橘弘一郎。此の世の中に、此の時世に、充実した感じ、たんのうする感じは、これより他に求められまい。最初から…

きまぐれオタのメモ

エス奉行 「最相葉月の『星新一』(新潮社)は読んだだすか?」 ジンボウ町のオタ 「読んだよ。ベタぼめはしないけれど、久しぶりにぐいぐい引き込まれるようなノンフィクションを見つけたという感じ。 猫猫先生もビックリというネタが出てくるよ。 星新一と…

忘れられた谷崎潤一郎と志賀直哉の出会い

猫猫先生こと、小谷野敦氏の「売春の日本史」(『考える人』連載)が終了。最終回には、 谷崎潤一郎はもっと早く、二十歳で一高の級友に吉原へ連れて行かれ、初めて女を知ったらしい。となると明治三十八年くらいなので、吉原歴は志賀より三歳年少の谷崎のほ…

宮本常一も読んでた『魔の宴』

『宮本常一 写真・日記集成』別巻によると、昭和25年6月30日の条の後に、次のようなメモがあるとのこと。 (略)太宰治、田中英光の作品に心をひかれ、『チャタレイ夫人』を肯定する気持。木村艸太の『魔の宴』*1には最も心をうたれた。自らの中にある弱さに…

朝倉文夫と三角寛

『野依秀市全集』第2巻(実業之世界社、昭和41年9月)中の「朝倉文夫の巻」に、三角寛も出てきた。 私が初めて会ったのは昭和二十年ごろ、大分県人会の会合の席だったと思う。(略) その後、「一夕君と飯を食いたいのだが、料理屋なんか嫌いだから、家へ来…

渡辺千萬子『落花流水』の近刊

4月10日に岩波書店から、渡辺千萬子『落花流水 谷崎潤一郎と祖父関雪の思い出』が刊行されるみたい。「6年前に刊行されて話題になった『谷崎潤一郎=渡辺千萬子往復書簡』に収録されなかった谷崎潤一郎宛書簡21通を収録する予定です」という。まだ、未収…

中谷徳太郎と「ハッピ会」

中谷徳太郎に関心を持っていそうな人を見つけた。紅野敏郎(こうのとしろう)だ。 『遺稿集連鎖−近代文学側面誌−』*1所収の「中谷徳太郎『孔雀夫人』『三人の女に』」によると、 『孔雀夫人』につづき中谷徳太郎にもう一冊没後の本がある。これも遺稿集とい…

文壇奇人谷崎潤一郎と生方敏郎

生方敏郎は、「文壇暗流誌」の(6)「文壇奇人傳」*1で谷崎潤一郎について、次のように書いている。 谷崎潤一郎君はまた奇人伝中の人物たるを失はぬであらう。彼は創作の数に於いては殆んど流行児の誰よりも寡なく、易々として流行児になつた成金党である。…

谷崎潤一郎と長野草風

谷崎潤一郎と長野草風については、1月17日に言及したけれど、「朱雀日記」(明治45年4月−5月「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」連載)に既に名前が出ていた。 葵祭見物の為めに、東京から平出修氏や長野草風氏や、知人がドカドカと押し寄せて来て、二三日一…

澁澤龍彦が愛した谷崎潤一郎

人の本棚を見ると、その人の人柄がうかがえて楽しいものだが、著名人となると、雑誌の書斎拝見などで写真をみることができるぐらいである。もっとも、蔵書目録が刊行される稀なケースもある。そんな一冊、澁澤の『書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録』*1でつかの…

劇作家にしてトンデモ世界の住民仲木貞一と谷崎潤一郎

『日本アナキズム運動人名事典』にも登場する劇作家仲木貞一。チャーチワードのムー大陸説の紹介や、竹内文献などの偽史運動にも深く関与したトンデモ系の人物でもある。 谷崎潤一郎全集の書簡篇中、濱本浩宛書簡で彼の名前に出会うことができた。 大正13年9…