神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

柳田國男

松本清張が見た柳田國男と折口信夫

松本清張『過ぎゆく日暦(カレンダー)』(新潮社、平成2年4月)に次のようにある。 (昭和五十六年)一月二十三日(金) いつかは柳田國男と折口信夫とを書きたいと考え、かねてからその資料を集めたり、また両人をよく知る人々の話を聞いたりした。 左の「…

奥田啓市鹿児島県立図書館長と全日本科学技術団体聯合会

柳田國男の年譜によると、柳田は、昭和11年4月28日鹿児島県立図書館で郷土資料を見学、5月1日には同図書館で講演している。これにより、柳田は当時館長だった奥田啓市と面識があったと思われる。奥田の経歴は、『簡約日本図書館先賢事典』によると、 奥田啓…

柳田國男を訪問する国会図書館副館長中井正一

浅野晃「大和の旅」(『祖国』昭和25年9月号〜26年12月号)*1によると、 これも後日談になるが、大和の旅から帰つてのち、やはり東京で柳田國男先生をお訪ねした。先生のお宅へは、終戦の年の五月ごろ、折しも空襲のまつ只中にお伺ひしたのが最後であつた。…

松宮春一郎年譜

わしとか書物蔵氏が、無名の人物の年譜を作ってしまう情熱はどこから来るのであろうか。さて、世界文庫刊行会を主宰していた松宮春一郎については、何回か記事にしてきたが、その後判明した事項も含めて、年譜を作ってみた(著訳書は原則として省略)。 しか…

柳田國男と満川亀太郎

『満川亀太郎日記』に従来の柳田國男年譜に記載のない柳田の動向が書かれている。 大正13年5月3日 今井良平、郷間正平君来訪す 郷間君に柳田国男氏を紹介す 10月15日 朝柳田国男氏を訪ひ(略) 14年6月27日 松岡均平、寺島成信、松木幹一郎、柳田国男、小松…

柳田國男に群がる図書館人(その2)

再び、「ジュンク堂書店日記」から引用させてもらおう。 多少好評(?)だった柳田國男の『炭焼日記』に見るズショカンインの話の第二弾。 1 大西伍一(後の府中市立図書館長) (昭和20年) 3月 9日 大西伍一君来、「村のすがた」一そろひを托し、片山…

柳田國男に群がる図書館人(その1)

お許しを得て、閉鎖中の「ジュンク堂書店日記」さんから孫引き。 柳田國男の『炭焼日記』にズショカンの関係者が何人か登場する。 1 中田邦造日比谷図書館長 昭和20年 7月15日 中田邦造君来、文庫疎開の話をして行く。信州高遠がよからうといふ話などを…

古屋鉄石の孫弟子、北一輝

北一輝・北署吉兄弟と、古屋鉄石の催眠術の試験台だった行者永福なる人物とは親しかったようだ。稲邊小二郎『一輝と署吉 北兄弟の相剋』(新潟日報事業社、2002年6月)によると、 また署吉の記録にも次のように書いてある。 「兄がどうして霊的人物になった…

生活社の前田広紀と六人社の戸田謙介

生活社の社長鉄村大二と編輯長をしていたという前田広紀、それに生活社に統合された六人社の社長戸田謙介が柳田國男の『炭焼日記』に出てくる。 大正19年1月9日 三国書房及戸田、生活社鉄村及前田来(略) 7月13日 るす中六人社より使来る。「国史と民俗学」…

矢田部一族も

柳田國男の妻孝の長姉順は、植物学者矢田部良吉の妻である。良吉は、『新体詩抄』の編著者の一人としても知られる。良吉の四男達郎は心理学者。普通の人は知らない人だが、森茉莉のファンは皆知っている。茉莉の夫山田珠樹の親友で、茉莉とはパリで親しくな…

結城禮一郎と柳田國男

柳田國男の「大正十一年日記」に増田正雄らしい人物が出てくることは、昨年4月11日にも言及したが、その後色々判明したので、再掲してみる。 大正11年1月10日 夕増田君とあふ約束 (略) 夜スキヤ町加賀屋、大阪の増田君招、市来結城静雄、石嘉六君同席 「市…

久保田万太郎から里見とんの消息を聞く柳田國男

さんざんネタに使った柳田國男の『炭焼日記』だが、まだまだ面白ネタが埋もれていた。 昭和19年9月27日 連句委員会第三次、高浜父子、佐藤、深川、久保田、伊原、折口、加藤。 会は平凡なれど行かへりの電車の込むことのみは非常なり。 久保田君と久しぶりに…

戦時下に秘画を見る柳田國男たち

高橋誠一郎という人は、慶應の経済学の先生だったらしいが、浮世絵のコレクターでも知られている。現在、三井記念美術館で「夢と追憶の江戸−高橋誠一郎浮世絵コレクション名品展−」を開催中(今月23日まで)。この高橋所蔵の浮世絵を戦時中に柳田國男らが観…

一水会と柳田國男(その2)

柳田國男が出席した一水会の時期としては、大正7年、11年、昭和16年が判明していたが、新たに昭和6年も判明した。貴族院議員岡部長景の日記に出てくる。 昭和5年12月3日 夜、細川侯に招かれて華族会館に催された一水会に初めて出席した。(略)往年支那問題…

昭和研究会と柳田國男

昭和13年3月28日、柳田國男は昭和研究会で講演をしているが、その内容に年譜と大蔵公望の日記で食い違いがある。 年譜 昭和研究会で教育改造論を話す。 大蔵公望日記 十二時、昭和研究会に行き、食後、柳田国男氏の日本民族の変遷に関する話をきく。 年譜の…

一水会と柳田國男

一水会とは、『白岩龍平日記』の中村義「第一部アジア主義実業家の生涯」によると、貴族院議員宮島誠一郎の次男で、漢学者、漢詩人、書家の宮島大八が大正6年1月に組織した研究会。毎月第一水曜日に華族会館で開催されたので、一水会と呼ばれたという。中村…

『柳田國男全集』(筑摩書房)に漏れたる著作

緻密を極める『柳田國男全集』だが、幾つか未収録著作を発見。 「イプセン雑感」『新天地』2巻1号、明治42年1月1日 「名家の読書時間」『読書之友』7号、大正元年11月1日 「出版界の積弊を難ず」『図書評論』1巻3号、大正2年6月3日 これらは、ちまちました文…

フリッツ・ルンプと柳田國男

柳田國男がフリッツ・ルンプに言及。「蔵書に埋れて本を馬鹿にする! 蔵書家漫訪(2)」『日本読書新聞』119号、昭和15年5月15日*1で、須山計一が柳田の発言として次のように書いている。 外国と云へば、最近ドイツで一寸まとまつた日本のお伽噺集が出まし…

柳田國男もお仕事、お仕事

宇都宮太郎の日記*1によると、 大正2年9月11日 (略)倉田隆吉(南洋事業に志し床次の紹介にて来訪、二千円の出資を願ふなり)(略)来衙。 9月29日 宮内[内閣]書記官柳田国男、床次の代を兼ね倉田の為め旅費の相談に来る。幾分は調達すべきも暫く待つべきを…

柳田國男と謎の西洋人

三村竹清の日記には、稀に柳田國男が出てくる。大正14年11月23日の条もその一つである。 八王子にて大義寺を尋ねて元横山町を曲れは かなたより洋服きたる二人連来る 見覚えありつるやうに思ひ近より見れは 柳田國男氏也 不しきの処にてといへは この西洋人…

上山草人と共に踊るスメラ学者井上芳郎

井上芳郎。明治21年生まれ、早稲田大学政治経済科専門部中退後、坪内逍遥主宰の文藝協会研究所第二期生となるも、病気で中退(『慶應義塾図書館史』による。2006年7月8日参照)。「資料翻刻文藝協会研究所日誌」*1に、その井上の名前があった。明治43年7月13…

柳田國男と浅野和三郎

新聞の訃報欄で見落としたが、猫猫先生によると小林一郎先生が亡くなったらしい。さて、『田山花袋宛柳田国男書簡集』に明治42年12月5日付け柳田の花袋宛書簡が収録されている。この中に「浅野君よりビケラスを返してくれと申来候に付 何とぞ直接に御返送給…

慶應義塾図書館員井上芳郎と柳田國男の深い交流

慶應の窓際図書館員で『シュメル・バビロン社会史』の著者である井上芳郎については、2006年7月8日、同年9月21日に言及したが、『炭焼日記』にあるように柳田國男と親しかったようだ。柳田の年譜(『柳田国男伝別冊 年譜・書誌・索引』)にも井上の名前があ…

オタどんと書物奉行ふたたび−柳田國男『炭焼日記』最大の謎に迫る−

オタどんと書物奉行の「ト問題コンビ」が帰ってきた。「七瀬ふたたび」と違って、帰って来なくてもいいという話もあるが、お付き合いのほどよろしく。 書物奉行 ん、オタどん難しそうな顔をしてるだすね。 オタどん うん。柳田國男の『炭焼日記』昭和19年1月…

大橋図書館司書大藤時彦と神西清

大橋図書館の司書で、後に民俗学者となる大藤時彦についても、年譜や伝記はないと思われる。略歴については、昨年8月29日を参照してほしいが、詩人神西清ととは親しかったようで、日記*1にしばしば名前が出てくる。そのうちの一部を紹介すると、 昭和12年4月…

モダンガール嫌いの柳田國男

大正12年に北澤秀一によって使い始められたという「モダンガール」*1。柳田國男はこの言葉が嫌いだった。 『日本』昭和2年8月14日掲載の「国語純化運動(下)」によると、 近頃は又洋語の奴隷となつて、盛んに流行語の為めに追ひ廻されてゐる。例へば『モダ…

 中田邦造と折口信夫(その2)

昭和20年8月15日のその日、日比谷図書館長中田邦造が折口信夫邸にいたことは、6月21日に言及した(7月18日も参照)。それに関する記述が「秋岡日誌」(『秋岡梧郎著作集』)に出ていたので補足。秋岡は日比谷図書館で管理掛長をしていた人物。 昭和20年7月23…

 中田邦造と民間伝承の会

日本民俗学会の前身である民間伝承の会。昭和10年9月3日に初会合が開かれ、同月18日機関誌『民間伝承』創刊。 同誌4巻7号(昭和14年4月1日)の「会員だより」に「石川県 中田邦造*1」からのたよりとして、 一昨年お世話になりました町村誌編纂講習会の講義刊…

 中田邦造と沖縄文庫

6月21日に言及した折口信夫と日比谷図書館長中田邦造による沖縄文献収集について、補足しておこう。 朝日新聞昭和20年8月2日に、「永遠に生く沖縄文化/伝承に民俗学者起つ/関係書籍や音盤を蒐集」との見出しで、「戦後の沖縄文化再建の日まで沖縄に代つて…

 柳田國男と「偽史」関係者織田善雄

大塚英志氏は、『偽史としての民俗学』で柳田國男の『炭焼日記』に織田善雄なる「偽史」関係者が出てくることを紹介している。 (昭和十九年) 三月一日 水よう 午後曇 散歩を見合せる。 名古屋の織田善雄君より漬物一桶鉄道便にて。その織田君やがて訪来る…