神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

ヨコジュン

二人のアナキスト、荒川義英と中山忠直は出会ったか?

『橋浦時雄日記』第1巻(雁思社、1983年7月)に荒川義英が出てきた。 大正4年10月8日 やるせなさに、午后百瀬君*1を訪う。宮嶋[原注:資夫]、荒川[原注:義英]等の客があった。 10月22日 帰って、『早稲田文学』の荒川[原注:義英]君の「漂ふがまゝに」を読…

中山忠直と竹内文献

SF詩人にして、日ユ同祖論者だった中山啓(中山忠直)の周辺には、澤田健や小谷部全一郎、三村三郎など、竹内文献がらみの人がいることはわかっていた。 しかし、思っていたより早い時期から同文献に接触していたことが判明。 大内義郷『神代秘史資料集成解…

長尾真治ではなく尾島真治だった

5月12日に言及した日ユ論同祖論の関係者、「長尾真治」は正しくは、「尾島真治」という人であった。 三村三郎の『ユダヤ問題と裏返して見た日本歴史』によると、中山忠直が『シオン通信』*1第4号に「毒殺を計られたコト」を書き、明治41年の『福音新報…

中山忠直と谷崎潤一郎を結ぶ線

『定本佐藤春夫全集』第36巻(臨川書店、2001年6月)所収の昭和7年(推定)4月24日付け添田知道宛の「辻潤後援会」の案内状に発起人として、 佐藤春夫 谷崎潤一郎 北原白秋 武者小路実篤 新居格 宮島[ママ]資夫 室伏高信 宮川曼魚 西谷勢之介 井沢弘 田中貢…

毎日新聞記者としての中山忠直

馬場孤蝶の日記に中山啓、本名中山忠直の名前が出ているようだ。 紅野敏郎「『馬場孤蝶日記(新資料)の意義』(『文学』1982年1月号)によると、大正9年5月29日の条に 五月二十九日 土曜 晴 安藤来る。レエニンの論文の筆記を頼む。午後その続きを訳し、午…

永代静雄の鳩事報国に賛同した協力者たち

天羽英二の日記には、永代静雄も登場する。 昭和17年3月10日 新聞研究所長永代静雄ヨリノ、大東亜伝書鳩総聯盟発起人ノ依頼相談 この「大東亜伝書鳩総聯盟」は、永代により昭和17年に創設された団体で、「大東亜ノ要域ニ鳩通信網ヲ建設スル」ことを目的とし…

中山忠直の暴走する妄想(その2)

中山忠直(中山啓)のSF詩『火星』*1に関する噂について書いた文献があった。 「昭和漢方の先駆者中山忠直」(『大塚敬節著作集』第1巻、春陽堂、昭和55年4月)によると、 この中山啓が自分の詩集を出版してくれといって、新潮社の玄関に、三日間坐り込んだ…

中山忠直の暴走する妄想(その1)

ヨコジュンさんのお気に入りで、SF詩人として著名な中山忠直は、日ユ同祖論者でもあったのだが、トンデモの領域を超えた妄想の世界に入り込んでいたようだ。 天羽英二(あもうえいじ)の日記によると、 昭和20年4月9日 沼津 中山忠直ナル狂気染ミタモノヨリ…

彌次将軍吉岡信敬墜つ!

生方敏郎の個人雑誌『古人今人』第51号(昭和15年11月20日発行)によると、 吉岡信敬君は、急性肺炎のため十二月七日夜溘然として長逝せられ十日午后大塚仲町高源院に於て盛んなる告別式を営まれた。謹んで弔意を表す。君は早大文科卒業すでに学生時代より明…

永代静雄の鳩事報国

書物奉行氏が「文献報国」とすれば、黒岩さんは「鳩事報国」というべきか。 「鳩事報国」って、「オタさんの造語か?」って・・・ 戦前そういう言葉があったみたいなのだ。『戦時下日本文化団体事典』第3巻(大空社、1970年7月。底本:『日本文化団体年鑑 …

三上於菟吉と早稲田大学応援団長吉岡信敬

三上於菟吉というのは、長谷川時雨の内縁の夫だった人らしいが、早稲田大学時代、吉岡信敬の指揮下で応援したことを回想している*1。 そして、同時に、二十二三年前、その当時の早稲田応援団長吉岡信敬氏に指揮されて、Wと白く染抜いた赤い三角旗を振つて、…

早稲田大学応援団長吉岡信敬にとうとう出会う

ヨコジュンさんの著書でその名前を知った吉岡彌次将軍こと、吉岡信敬。その名前を著名人の日記の中に見つけた。 まずは、坪内逍遥の日記(『未刊・坪内逍遥資料集』第3巻)から。 大正14年5月24日 朝 吉岡信敬来、電力会社慰労会にて青柳有美も同伴のよし ヨ…

8年かかったヨコジュンさんへの回答

ヨコジュンさんへ ヨコジュンさんは、覚えていらっしゃるでしょうか。ヨコジュンさんは、『明治の夢工房』(潮出版社、1998年7月)で、『実業之日本』(昭和10年12月1日号)に掲載されているエジソンバンドなる記憶増進器の広告について次のように書いておら…

山本鼎が渡航中に出会った人々

山本鼎の「渡航日記」*1には、どこかで聞いたことのあるような人名がずらりと登場する。 明治45年7月16日 此処で米国産の手品師の一行や、臭いきたない支那人共がのり込むだので、阪田、沢木*2の両君は甲板のスモーキング・ルームに逃け出した。予も床…

ヨコジュンもビックリ!?岩野泡鳴の日記に薄井秀一登場

ヨコジュンさんが、『明治時代は謎だらけ』などで、夏目漱石に山中峯太郎を紹介した人物として、その足跡を探求した東京朝日新聞記者薄井秀一。 その薄井を岩野泡鳴の日記*1大正6年4月3日の条に発見。 新潮、小此木、前島、天弦、中央新聞を訪ふ。薄井(秀)…

アンダーグラウンド・ブックカフェ 地下室の古書展

さて、明日はいよいよ、黒岩比佐子さんと岡崎武志さんの出番。 今、一番熱い、この「あづま女となにわ男」によるトンデモなくオモロそうなセッションの開催。→地下室の古書展 かつて、『新・日本SFこてん古典』(徳間文庫)で、ヨコジュンと會津信吾は、次の…

エスペランチスト藤澤親雄とその時代(その4)

再び、時計の針を戻して、明治39年をのぞいてみよう。『日本エスペラント運動史』によると、 1906年(明治39年)9月28日、日本エスペラント協会は第1回大会を東京神田美土代(みとしろ)町青年会館で開催した。大会の様子を当時の協会機関誌の記…

大川周明とトンデモ本の世界(その7)

3 大川周明と櫻澤如一(承前) あわてて、草柳大蔵『実録満鉄調査部』上巻を見る。岡上(黒田)の名前がちゃんと出ている。 松岡[均平]は東大ではじめて社会主義を講義し、その中でマルクス主義を紹介した教授である。伊藤武雄によると、そのときの松岡の講…

大川周明とトンデモ本の世界(その6)

3 大川周明と櫻澤如一 藤澤親雄は、数冊のトンデモ本を出しているが、酒田市立光丘文庫には収蔵されていない。これに対して、藤澤を「畏友」と呼んだ櫻澤如一の本(トンデモ本とは言えないが)は、次の三冊が収蔵されている。 『新しい榮養學』(昭和17年…

『保科五無斎』(井出孫六著。リブロポートシリーズ民間日本学者)から

『信濃公論』なる週刊紙の発行も、右のような五無斎の心意気の発露から生まれることになったとみてよいだろう。すでにみたように、「信濃図書館」は保科五無斎が精魂傾けて実現したものといって過言ではなく、その「信濃図書館」はのちに信濃教育会から県へ…

平凡社創設者下中彌三郎の謎(その2)

『下中彌三郎事典』(下中彌三郎伝刊行会。昭和40年6月発行)から読み解く。 4 下中彌三郎と三浦関造 同じく、神田が執筆を担当した「心霊研究」の項を見てみよう。 下中は<興味過多症>を自称していただけに、怪奇の世界にも非常な関心を寄せて誘われ…

 「さぼうる」で夢の古本合戦

今日も今日とて「さぼうる」で、仕事をさぼっている一団がいる。 神保町のオタさん 「書物奉行さん、遅いなあ」 退屈男さん 「いつものように、おっとり刀で駆けつけてくるんじゃないですか」 神保町のオタさん 「風邪の方はどう?」 退屈男さん 「ブックオ…

『横田順彌のハチャハチャ青春記』(横田順彌著)から

特記すべきは高校二年生の時東横線・自由が丘駅近くの<文生堂書店>店頭均一台で、押川春浪という明治時代の冒険SF作家の処女作『海底軍艦』(博文館文庫版)ほか数冊を、一冊二十円で手に入れたこと。これが、ぼくの古典SFの研究と明治文化史の研究に…

『横田順彌のハチャハチャ青春記』(横田順彌著)から

[一の日会]の仲間が、ぼくを古典SF研究家にしてくれたのだ。そのおかげで、 いまは、ほとんど蒲団一枚しか敷くスペースしかなく、あとはすべて古本に 囲まれるという生活をしているが・・・。数年前、二十年間生活を共にして きた妻に、突然離婚届けを突きつ…

『横田順彌のハチャハチャ青春記』(横田順彌著)から

古書集めは前記のように中学時代から、ぼちぼちとやっていたが、買うのは、旧<宝石>のほかは<丸>や<画報戦記><世界の艦船><航空ファン><航空情報><海と空>といった戦記雑誌や飛行機関係雑誌、[世界航空文学全集]のルネ・ムシュット『大空への…

『探書五十年』(福田久賀男著。不二出版、1999年3月刊)から

西早稲田バス停の前に、大観堂という新刊書店がある。この一画は 戦災を免れたそうで、建物も戦前からのものと思われる位、店内 も暗いので、古書店と間違って入ってくる客も間々あったとか。 通りすがりに覗くと、何時も、店に座っているのは品の良い老女 …

『努力と信念の世界人 星一評伝』(大山恵佐著)(大空社・伝記叢書262)中「解説」(横田順彌)から

文庫版『明治・父・アメリカ』(新潮文庫)解説者・小島直喜 は『百魔』によって、星一を知り「これは伝記小説にしたらお もしろいかもしれない、といつの日にか作品化することも考え た」そうだが、筆者は二十年ほど前に入手した時点で同じ思い にかられ、…

『青年小泉信三の日記』(小泉信三著)から

明治44年1月24日 教員室で永井荷風さんに阿部から頼まれた「ふらんす物語」の事を聞く。 同月30日 今日「ふらんす物語」の「巴里のわかれ」「黄昏の地中海」と「三田文学」所載、国枝史郎(原注:1886−1943。『神州纐纈城』の作者も、この年…