神保町系オタオタ日記

自称「人間グーグル」

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

第一高等学校教授の職を女で棒に振った内藤丈吉と中山岩太の妻中山正子ーー辻直人『近代日本海外留学の目的変容』(東信堂)への補足ーー

辻直人『近代日本海外留学の目的変容:文部省留学生の派遣実態について』(東信堂、平成22年11月)を読んでみた。本書は、明治8年から昭和15年までの文部省留学生3,180人のデータベースを作成し、更に大学史史料や外交文書等を駆使して、戦前期の文部省留学生…

南洋協会が夢見た帝国日本の南洋博物館及び南洋図書館

中島俊郎「表象としてのジェームズ・ブルック」の抜刷を御恵投いただきました。ありがとうございます。「土俗研究者にして日本学術探検協会理事長の三吉朋十もチャーチワードのムー大陸に騙された。そして、三島由紀夫も?ーー森谷裕美子「三吉朋十と土俗学」への…

九鬼周造「最後の歌」の初出誌としての『静坐』(静坐社)

小林参三郎の妻小林信子が昭和2年に創立した静坐社の機関誌『静坐』については、「新村出・成瀬無極の脚本朗読会カメレオンの会と小林参三郎・信子夫妻ーーそして谷村文庫の谷村一太郎もまたーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介したところである。成瀬無極の「…

鹿子木孟郎の妻鹿子木春子の日記(未公刊)に注目

存在が判明しているものの未公刊の日記については、「オタどんが死ぬまでに読みたい未公刊の日記群ーー堀一郎の日記はどうなった?ーー - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがある。関西美術院第3代院長だった鹿子木孟郎の妻鹿子木春子の日記も、未公刊で…

土俗研究者にして日本学術探検協会理事長の三吉朋十もチャーチワードのムー大陸に騙された。そして、三島由紀夫も?ーー森谷裕美子「三吉朋十と土俗学」への補足ーー

平成8年6月『歴史を変えた偽書:大事件影響与えた裏文書たち』(ジャパン・ミックス)が刊行された。ここに掲載された藤野七穂「偽史と野望の陥没大陸“ムー大陸”の伝播と日本的受容」には戦前ムー大陸に言及した未知の文献が多く引用されていて、感心したもので…

東北帝国大学工学部の山内清彦と禊の科学者成瀬政男ーー寸葉会で見つけた『学士試験成績簿』からーー

何年か前に寸葉会という絵葉書などの紙ものの即売会で、戦前の『学士試験成績簿』を購入した。東北帝国大学工学部電気学科の学生の成績簿である。東大や京大の文学部で更にある程度知名度のある人のものだったら、速攻で買いだ。しかし、これは東北帝大工学…

「西の田村敬男か、東の赤尾好夫か」と呼ばれた大雅堂の田村敬男と松代大本営への印刷所移転ーー下鴨納涼古本まつりで見つけた『京都綜合製版沿革史』からーー

下鴨納涼古本まつりの初日、福田屋書店の1冊200円3冊500円台では、1冊だけ購入。キリスト教関係の良さげな本が幾つか出ていた。しかし、既にリュックが重たくなっているので、『京都綜合製版沿革史』(京都綜合製版協同組合、昭和56年10月)だけを購入したので…

昭和8年スチーム暖房に惹かれて北白川に引っ越した京都帝国大学植物学教室の北村四郎ーー下鴨納涼古本まつりで竹岡書店から見つけた年譜からーー

下鴨納涼古本まつりが無事開催された。雨で2日間中止というハプニングもあり、主催者・参加店は大変だったと思う。お疲れ様でした。恒例の竹岡書店の3冊500円台は、従来の1冊売り不可から3冊まで500円(1冊でも2冊でも500円)になり、3冊揃わないと家に帰れな…

『子供の科学』の表紙・記事を分析した神野由紀・辻泉・飯田豊編著『趣味とジェンダー:〈手づくり〉と〈自作〉の近代』(青弓社)

昭和12年10月柴田宵曲は、大橋図書館と日比谷図書館である雑誌を探していた。大正13年に創刊された『子供の科学』(誠文堂新光社)である。『日本古書通信』昭和58年3月号掲載の「柴田宵曲翁日録抄(21)」から引用する。 (昭和十二年) 十月二十二日 午後大橋図書…

田所廣泰・小田村寅二郎らが創立した日本学生協会で指導的役割を果たしたとして公職追放になった経済学者山本勝市

『公職追放に関する覚書該当者名簿』によると、経済学者山本勝市の公職追放該当事項は、「国民精神文化研究所々員学生協会に於て指導的役割を演ず」である。山本は昭和7年から18年まで国民精神文化研究所の所員であったので前半の方はよいとして、後半の方が確…

昭和初期における健康雑誌の時代ーー『健康之友』(健康之友社)・『健康時代』(実業之日本社)・『健康之光』(健康之光社)ーー

平安蚤の市で@pieinthesky氏から『健康之友』と『健康之光』を入手。既に所蔵している『健康時代』と併せて、昭和初期の3種類の健康雑誌が集まった。写真のとおり、同じような表紙である。それぞれの創刊時期は、 『健康之友』(健康之友社)大正13年創刊(推定…

伊達俊光の大阪文化女塾の創立と終焉ーー本野精吾や田代善太郎が講義ーー

ツイン21古本フェアで入手した伊達俊光『大大阪と文化』(金尾文淵堂、昭和17年6月)については、「ツイン21古本フェアではどんだけ?こんだけ! - 神保町系オタオタ日記」で言及したことがある。この本に出てくる伊達が昭和5年に創設した大阪文化女塾も気になる…

日本人は広島への原爆投下まで原子爆弾の存在を知らなかったという俗説の誤りーー中尾麻伊香『核の誘惑』(勁草書房)からーー

ざっさくプラスで「原子爆弾」をタイトルに含む記事を検索すると、次のような結果となる。 昭和20年に初登場(23件)するまでは、見事にゼロである。これを見ると、広島に原爆が投下されるまでは、軍人や物理学者などを除いた一般の日本人は原子爆弾という兵器の…

占領下の雑誌『月刊中国』(中国新聞社)に寄稿した宮本常一と竹中郁

「大東亜学術協会の機関誌『学海』ーー敗戦を巧みに生き延びた戦時下の雑誌ーー - 神保町系オタオタ日記」で紹介した『学海』2巻7号(秋田屋仮事務所、昭和20年8月)には、「次号予定」が出ている。 宮本常一の名前がある。ネットで読める菊地暁先生の「人文研探検―…

『東壁』(関西文庫協会)の編集委員川村猪蔵は、日出新聞記者だった

『図案会誌』2巻1号(京都図案会雑誌部、明治40年4月)の編集人に川村猪蔵という人がいた。このことは、「明治期の京都における染織図案史の修正を迫る『京都図案会誌』を発見 - 神保町系オタオタ日記」の注で言及したことがある。今回、その川村の経歴が判明し…